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2006-04-07 00:00
「知の饗宴」に期待する
進藤榮一
筑波大学大学院名誉教授
遠い歴史のしじまをかいくぐって、いま東アジア共同体が訪れ始めています。
かつての私たちの敗戦が、アジア諸民族の独立を幇助して「東亜の解放」をもたらしたように、バブル崩壊後の日本の「第2の敗戦」が産業の空洞化を生みながら、アジアへの資本輸出と技術移転、政府開発援助とを通じ、NIESやASEANから中国、インドに至る、アジアの経済発展を幇助して市民社会を台頭させています。第2の「東亜の解放」です。その解放が、アジア資本主義市場を成熟させ、東アジア諸国家問の経済的政治的格差を縮めながら、日本の構造改革と経済再生を支え、共同体形成の条件を醸成しています。東アジア諸国家の経済統合と市民社会化の動きが、日本の構造改革と連動し、共同体の形成を促していく論理です。
そしていま、歴史問題や領土論争が表面化する中で、中国の成長と拡大とを東アジア秩序の安定と発展に関与させて共生の途を拓くために、改めて東アジア共同体の構築が、アジアの共通課題として設定されるに至っています。知が価値をつくる知識基盤社会下の21世紀世界にあって、私たちにいま問われているもの―それは、来たるべき東アジア共同体のシナリオを、知がどう描いて、その政策課題と制度設計をどう構想・立案し、諸国家とともに実現していくのか、そのために、イデオロギーと国境を越えた、知的インフラと市民ネットワークとをどうつくり、アジア共同体市民意識(アイデンティティー)の形成につなげていくかです。
その21世紀世界の最先端課題に応えて、「トラック2外交」としての評議会の機能をいっそう稔り豊かなものにするためにこそ、私たちは、開設されたオピニオン・ページで展開される「知の饗宴」をともに享受し、アジアの未来をともにつくりあげていきたいものです。疑いもなくそれが、「トラック3外交」を始動させ、東アジア共同体を創生させていくはずです。
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