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2009-02-05 00:00
(連載)「機会の窓」は開いているか:首相のサハリン訪問(4)
袴田 茂樹
青山学院大学教授
タンデム政権という異例の状況自体が危機を深めているという説得力のある論もある。つまりメドベージェフとプーチンはシャム双生児のように密接に結びついているので、どちらも政策転換とか思い切った政策が出せず、それが事態を膠着させ悪化させていると言うのだ(D・フルマン「シャム双生児の政治」『独立新聞』2009.1.21)。メドベージェフは思い切った政策転換ができない。それはプーチン批判を意味するからだ。実際に大きな権力を有しているプーチンも、自ら指名した大統領を出し抜いたり批判する政策は出せない。つまり「両すくみ」の状態なのだ。さらに、大統領、首相の個人的関係が良くても、それぞれの機構、人脈間には熾烈な利権争いがすでに表面化し、これについてはロシア国内でも数多くの報道がなされている。これらの状況の下で、ウクライナとのガス戦争についても、1月半ばの両国の合意は本来なら12月末の段階で可能だったのに、今述べた事態の中で解決が遅れ、結果的に世界に影響を与える事態となったと言われる。
経済危機の状況下で、現在のロシア指導部は、国民の不満の爆発を抑えることに全力を投入しなければならない。つまり、メドベージェフ・プーチン政権は、決して安定しておらず、ある意味で危機に直面している。このように言っても、今では誇張ではなくなった。さらに、ロシアはグルジア紛争後は、領土問題により敏感になり、現在は米国に張り合いながら、大国主義を強化している。シロビキの力も強大だ。
これらの状況を考えると、さらにメドベージェフの今日の国内での力量を考えると、客観的な諸情勢から判断する限り、現在メドベージェフがプーチンを超えて思い切った提案をするほどの「機会の窓」が開いている状況とはとても言えない。となれば、この状況のもとで、麻生首相がメドベージェフ大統領から何か前向きのアプローチを引き出せると考えるのは、客観性を欠いた楽天主義である。またそれを引き出すために、こちらから「解決案」を議論したり、提案したりすることは、わが国の基本的な立場を掘り崩すだけに終わるだろう。これは、ロシアにとって最も好都合な状態である。外交的な言辞に安易に幻想を抱いたり、翻弄されたり、すべきではない。(おわり)
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