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2009-02-04 00:00
(連載)「機会の窓」は開いているか:首相のサハリン訪問(3)
袴田 茂樹
青山学院大学教授
そうなると、日本が関心を持てる新たなアプローチの可能性となると、けっきょく問題は、国後、択捉の帰属問題を真剣に討議するか否かである。これは、東京宣言での両国の合意、つまり「4島の帰属問題を解決して、平和条約を締結する」という線までメドベージェフが立ち戻る(プーチン時代に後退した状況から考えると、「立ち戻る」は「進む」を意味する)ことができるか、が問われている。この点を無視したいかなる案も、両国の基本合意を否定するもので、真剣に検討するに値しない。これは決して原則論でも、強硬論でもない。というのは、4島の帰属問題を交渉するというのは、帰属先については一切述べておらず、ニュートラルな表現だからだ。国後、択捉の交渉は、まさに両国が合意した「既存の文書」に依拠するものだ。
問題の解決は、最終的には両国首脳の決断にかかっている。メドベージェフがプーチンを超えて、紋切り型でない、つまり国後、択捉の帰属問題も真剣に討議する創造的なアプローチを行う力量があるか、今日、そのための客観的な諸条件が生まれているか、あるいは生まれる可能性があるか。さらに言えば、わが国にも解決のための諸条件がそろっているだろうか。この問題で首相が国内世論を統一するだけの強力な指導力を発揮できるだろうか。換言すれば、両国の置かれている諸条件から考えて、平和条約問題解決のための「機会の窓」は今日開いていると言えるか。
メドベージェフが北方領土問題で何か意味のある新しい提案をするためには、ロシア国内が政治的、経済的に安定していること、また大統領権力が強力であること、この2つの条件が不可欠だ。
経済が日本や欧米以上に深刻な状況にあること、賃金低下や失業の大幅増加にも関わらず、スタグフレーションで欧米や日本と逆に物価は高まり、国民の不満が高まっていることは、すでに広く指摘されていることだ。極東でも輸入車(日本車)の関税引き上げに強く反対する大衆デモが続いている。しかも、政府がこれまで打ち出した経済危機対策はほとんど実行されておらず、苛立ったメドベージェフは1月11日に、(これはタンデム政権としては異例の状況だが)政府の閣僚、官僚を批判した。ロシア国内では「メドベージェフとプーチンの間に亀裂か」と騒がれた。強力と見られたタンデム政権の安定性が、経済危機と社会不安増加の中で、根底から揺らいでいるのである。(つづく)
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