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2009-02-02 00:00
(連載)「機会の窓」は開いているか:首相のサハリン訪問(1)
袴田 茂樹
青山学院大学教授
1月24日に麻生首相とメドベージェフ大統領は15分間の電話会談を行い、大統領は2月中旬にサハリンで開催される「サハリン2」の生産稼動式典に首相を招いた、と報じられた。また大統領は「2国間のすべての問題について話し合いたい」と述べ、これに対して麻生首相は「感謝する。検討のうえ回答したい」と応じたという(読売、朝日1月25日)。「すべての問題」ということは、北方領土問題についても話し合うということを意味する。経済問題でロシアが産業の現代化のために日本の協力を以前より強く求めるのは間違いない。ロシア経済が危機状況に陥っており、資金的にももはや余裕がなくなってきたからだ。ただ、それだけでは日本にとって魅力がないので、北方領土問題で気を持たせたのである。
この招待に対して、首相はジレンマを感じているはずである。というのは、「サハリン2」のプロジェクトに対するロシア側の強引なアプローチが世界から批判されたことは、まだ記憶に新しい。この式典に参加することは、「サハリン2」を例とするようなロシアのエネルギー戦略を、日本政府が問題にしていない、ということを世界に示すことになる。ロシアとウクライナのガス戦争の直後だけに、ロシアのエネルギー戦略に対するわが国の姿勢は、特別の関心を呼ぶだろう。もちろん、招待に応じれば批判も出るし、日本の弱さを示すことにもなる。また、日本の国内政治が混乱しているとき、しかも3週間前という直近の招待にもかかわらず、日本のトップがいそいそと馳せ参じたとなると、麻生首相よりもメドベージェフ大統領が格上である、ということを認めることにもなる。というのは、逆の場合はまず考えられないからだ。
一方で、ロシアが北方領土問題で一見前向きの姿勢を示したことを、無視することには迷いもある。新大統領は、ひょっとして何か新たな提案を有しているかもしれない、という思いも首相にはあるだろう。首相としては、対露政策で新機軸も出したい。自民党や首相個人にとって国内政治が苦しい状況にあり、また北方領土問題が袋小路に陥っている時だけに、この問題で少しでも外交的な前進があれば、あるいはそのように演出できれば、ちょっとした政治的な白星となる。さらに、もし訪問を断れば、わが国の一部の者から、ロシア側が北方領土問題で前向きの姿勢を示したのに、首相は折角のチャンスを逃がした、と批判される恐れもある。
わが国の政治状況も首相の心理も読み、それを「サハリン2」に絡めてくるあたり、ロシア側の外交戦術もなかなかしたたかである。第3者としてみた場合、「おぬし、なかなかやりますな」と、私はロシア外交のこの変化球に対しては「優」を出したい。(つづく)
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