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2009-01-20 00:00
日本は政治制度改革でアジアのお手本を示せ
武石 礼司
東京国際大学教授
近年、アジア諸国においては政治制度の整備が着実に進められており、インドネシアのように新たに三権分立の制度的確立が達成された国も出現している。アジア各国とも歴史的な成り立ちが異なるために、政治制度はその詳細を分析すると、様々な点で実に大きな差異があるが、それでも人権の尊重、普通選挙の実施、司法権の独立等の望ましい方向に向かっての制度整備が、いくつもの国で進みつつある。アジア各国の政治制度の整備が進む中、日本の政治制度を見ると、衆議院と参議院の委員会制度および国会の本会議の現状には、改善の余地が多くある。
例えば、国会の委員会の審議時間は平均すると1日1時間程度である。しかも、テレビによく映る予算委員会のみが(選挙区の有権者にアピールできるため)注目され、予算委員会では、予算審議ではなく、国政全般に関する審議が行われている。予算案に対する審議は、他の委員会でも殆ど行われないために、明らかに予算案に関する審議が不足している。国会に関しては、臨時国会が開かれるのが常態化しており、会期日数は年間200日を超える場合が多い。一方、本会議の審議時間は、審議促進と効率化を進めるとの方針の下、要請がない限り質疑と討論は省略する慣例があり、平均で1日1時間程度に過ぎない。さらに、最短では5分という開会時間の記録もある。
英米独仏等の議会では、1日7時間から9時間程度の審議時間となる場合が普通であるが、日本の国会の審議時間は、世界各国の議会と比べても極端に短い。大日本帝国憲法下の帝国議会の審議時間を見ても、1日当たり平均4時間程度であった。日本の本会議の審議時間は短く、「審議しない国会」が常態化している。さすがにこの点に関しては、自民党などが発表している憲法改正案において、憲法56条の「議事」定足数の規定を削除し、「議決」定足数のみを残し、柔軟な議院運営を目指すとしている。ただし、現状でも、米国で採用しているように、「討論のみを行う場合は、議事に含めない」との限定的な憲法解釈を行うことで、実質審議を、必要な議員で行うことは可能と考えられる。
国会および委員会の活性化のためには、上記の改革に加え、次のような細かな改正を積み重ねることで、意外に大きな効果が期待できると考えられる。国会の会期不継続原則(国会法68条)の改正、行政手続法の委任立法(行政立法)等の手続きに対する国会関与の規定の追加、国会の委員会における法案の逐条審議の手続き規定の作成、委員会における議事定足数の規定の緩和、国会の委員会および本会議での審議スケジュール作りへの内閣の関与、内閣による法案の委員会提出後における修正の容認、与党閣外委員による質問の一部容認等である。アジア各国のお手本となる政治制度を日本が維持していくことができれば、日本のプレゼンスは向上する。如何にしたらより良く制度が機能し、国会・委員会等での議論が活発化し、実質審議が行われるかを検討し、細かな制度の見直しを積み重ねていく必要がある。
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