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2009-01-09 00:00
(連載)「サハリン・フォーラム」で感じたこと(2)
袴田 茂樹
青山学院大学教授
私が驚くのは、ビザなし交流が始まったそもそもの理由を、サハリン側が全く理解していない、ということだ。また、ビザの発行に関する基本的な知識を欠いている、ということも判明した。われわれがサハリン側に説明したのは、次の点である。
ビザなし交流は、ソ連時代の1991年にゴルバチョフ大統領が提案した。その理由は、「北方4島は係争の地となっており、日本政府は日本の領土だと主張しているので、その島の住民であるロシア人に日本入国のビザを発行できないし、日本国民もソ連(ロシア)のビザを取得して、島を訪問することはできない。このような日本政府の基本的な立場をソ連政府は十分理解している。それゆえ、ソ連側は、島の住民や元島民に対する人道的な配慮から、特別にビザなしの交流を提案し、日本側も賛成した」ということである。つまり、「4島は係争の地であるが故に、日本政府は通常のビザを出せない」のであるが、そのことは、ロシア(ソ連)政府自体が認めていることである。もし通常のビザを発行できるのであれば、ビザなし交流自体が不要だ。また択捉島に本拠地を置くギドロストロイの社長には、「住民登録がサハリン島だからとして、日本のビザを発行できるとするなら、4島の島民はみな便宜的にサハリン島に住居登録さえすれば、ビザなし交流の枠と関係なく、誰でも日本を訪問できることになる。もしこれが可能なら、4島の島民にとって、ビザなし交流は不要だっただろう」と説明した。
「サハリン州民全体にビザなし交流を広げよ」という提案も、ビザなし交流の枠組みが設けられた理由がまったく理解されていないことを示している。また、「サハリンと北海道の地域間でビザ制度を廃止せよ」という提案も、ビザ発行は国家主権にかかわることであり、したがってビザ廃止協定は国家間の協定でなければならず、地域間でビザ廃止を協定することはあり得ない、ということを理解していない。このような基本的な事柄をわれわれはサハリン側に懇切に説明した。ただ、ビザなし交流の在り方については、領土問題がすぐに解決できない以上、時代の要請に応じてその内容を改善する必要があり、これはまた別の次元の問題として検討しなければならない、と説明した。
この問題の討議を通じて痛感したことは、北方領土問題とそれに関連する基本的な事柄をロシア国民がまだまだ理解していない、ということであった。また、このような問題を日本側とロシア側が民間レベルでじっくり話し合う機会が、地域交流の場においても、経済交流の場においても、ほとんど存在しないということであった。この観点からも、「サハリン・フォーラム」を続ける意義を再確認した次第である。(つづく)
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