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2008-12-29 00:00
(連載)金融危機と日中協力(3)
関山 健
東京財団研究員
そこで、筆者は、国際決済銀行や国際通貨基金の統合改組によって、ケンブリッジ大学のJ.L.イートウェル博士とニューヨーク大学のL.J.テイラー教授が主張するような「世界金融機関」を設立し、そのうえで、その意思決定機関たる理事会において拒否権を有する常任理事国に日本がおさまるように、国際金融システム改革の議論を誘導していくことを政府に提案したい。
イートウェル博士らは「自由な市場が効率的であるためには、効率的な規制が必要である」との考えに基づき、その共著書『金融グローバル化の危機』(2001年、岩波書店)において、国際金融市場で効率的規制を提供する国際機関として、国際決済銀行や国際通貨基金を発展させた「世界金融機関」の設立を提案している。まさしく筆者も同感である。この「世界金融機関」の機構について、イートウェル博士らは多くを述べていないが、筆者は、その意思決定機関として全加盟国で構成される総会と、10カ国/地域で構成される理事会の設置を提案する。理事は、出資比率上位5カ国/地域を常任とし、残り5カ国/地域を総会での選挙で選出するのがよいだろう。
そのうえで、総会は加盟国の過半数の議決で理事会へ勧告を行い、理事会が総会からの勧告に基づき全ての常任理事国を含む3分の2以上の議決で機構として意思決定する形がよい。常任理事国となる出資比率上位国/地域には、米国、EU、中国、日本が入るようにして、この4カ国/地域が今後の国際金融経済のかじ取りを担う仕組みである。
もちろん、こうした国際金融システム改革は、経済金融政策に関する各国の主権に関わり、また、とりもなおさず戦後アメリカを中心に構築されてきたブレトン・ウッズ体制の見直しを意味するものでもあることから、これに手をつけることはそのまま国際政治の駆け引きにつながる。日本だけでも改革はできないし、中国だけでも改革はできない。だからこそ、日中両国が手を携え、さらにEUも巻き込んで、国際金融システム改革に向けて協力する必要があるのである。以上はあくまで一アイデアであるが、いずれにせよ、日中両国政府は、現在の米国中心のシステムを改革し、今後の国際経済を米国、EU、中国、そして日本の四頭体制で運営する仕組みに変えることに、共通利益を有していると筆者は考える。(おわり)
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