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2008-12-27 00:00
(連載)金融危機と日中協力(1)
関山 健
東京財団研究員
アメリカ発の金融危機は世界中に波及しているが、比較的影響が小さいと言われていた日本と中国でも、景気の後退が著しい。この危機拡大の局面に当たって、日中両国は、(1)当面の金融危機の深刻化防止策、(2)中期的な景気下支え策、(3)長期的な国際金融システム改革のそれぞれについて、協力すべきだし、それは可能であると考える。
まず、当面の金融危機の深刻化防止策としては、金融面での被害が比較的少なく、資金が豊富な日中両国が、東アジアの国際金融の安定のために果たすべき役割は大きい。例えば、現在、東アジアでは、通貨危機に陥った域内国を救済するために、総計830億ドルの二国間通貨スワップ協定の網(チェンマイ・イニシアティブ)が張り巡らされているが、日中両国がこうした協定を通じて、域内の金融安定化に向けた強い意思を示すことには大きな意味がある。特に韓国の通貨ウォンが暴落しているなか、日中韓首脳会議では、三国の首脳が東アジアの金融経済の安定のために協調姿勢を強く打ち出すことが期待される。
次に、中期的な景気下支え策としては、「資金はあるが市場を必要とする日本」と「市場はあるが更なる資本と技術を必要とする中国」との間で、お互いに協力して世界的景気後退の影響に対処すべきだし、それは可能だと考える。世界金融危機による「外国人投資家の資金回収」や「輸出の減退」という影響は、日中両国に共通だ。特に、もともと内需が弱い日本は、輸出の減退から深刻な影響を受けている。一方の中国は、輸出の減速を内需の拡大で補うために、更なる投資を必要としているが、金融危機の影響を強く受けた欧米の企業や金融機関からは投資を期待できない。そこで、日中間では、お互いの強みを活かし、お互いの弱点を補いながら、貿易投資の更なる発展が望まれる。両国政府には、その促進に向けた施策を期待したい。
例えば、中国は先日4兆元に上る内需刺激策を表明し、今後環境対策や鉄道・地下鉄などのインフラ整備を大々的に進める計画だ。これらは日本企業が高い技術力を有する分野であるが、これまで日本企業はその競争力に見合うほどこれら分野で中国に進出できていない。したがって、高速鉄道や地下鉄など象徴的なプロジェクトで日本企業が採用されるように両国政府は積極的な働きかけを行い、日本企業の中国進出を後押ししてもらいたい。また、今春の餃子問題発生以来、日本では中国産食品全体に対する不信感が高まり、その対日輸出が大きく落ち込んでいる。
日中両国政府には、中国産食品に対する信用を回復し、その対日輸出を促進するために、信用失墜のきっかけとなった餃子問題について一刻も早く真相を解明してもらいたい。さらに、両国政府には、ぜひとも貿易投資促進の障害となる各種規制の削減に取り組んでもらいたい。そのためには、日中韓首脳会議において、政府間交渉の開始目処が立っていない日中韓FTAの交渉開始に向けて、首脳レベルでの決意を示してもらいたい。(つづく)
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