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2008-12-15 00:00
アジア共通通貨は可能か、メリットはあるか?
近藤 健彦
明星大学教授
本稿は、12月1日付けで投稿した拙稿「アジア共通通貨単位構想について」の後日談である。ジャンモネの『回想録』の全訳が今週から本屋にならぶはずであるので、店頭でパラパラとみていただきたい。私の訳の間違いをご指摘ください。
12月12、13日の両日、全日本証券学生連盟の主催で東京で開かれた「全国証券ゼミナール大会」の今年のテーマの一つが「アジア共通通貨の可能性とメリット・デメリット」だった。全国の20の大学の学生たちがこのテーマで論文を提出し、議論した。私はこんな21世紀的テーマが、多くの学部の学生に議論されるのに驚いた。フレッシュなうちにこの欄をお借りして、そのときの印象を記そうと思い立った。討議では、少なくとも2校が「アジア共通通貨は不可能だし、メリットも少ない」と明快に論じた。そのうちの1校は「最適通貨圏」の理論を使って「アジアはその要件を充たしていない」と指摘した。このプロボカティブな発表がきっかけになって、「なぜアジアに共通通貨が必要なのか?」を各校が論ずるところとなった。
学生の理解では、アジア共通通貨の議論は1997年のアジア通貨危機が出発点になっており、その再発防止が狙いである。しかし、「タイの通貨危機というだけでは、中国や日本は痛みを感じない。よってその必要性は弱いのではないか?」というのが、彼らの議論だった。それに対する私のコメントは以下である。
「アジア共通通貨」の議論は今後のアジアについてある種の想定をおかなければ成り立たない。例えば中国である。「国際金融の不可能の三角形」に即していうと、中国は現在「資本の自由な移動」を犠牲にして「為替レート」の安定と「金融政策の独立性」を維持しようとしている。昨今の金融危機で今後に目が離せないが、にもかかわらず21世紀世界は「資本の移動の自由」は維持され、それが中国にも及ぶのではないか。とすれば中国も残る2つのどれかを捨てなくてはならない。中国は「金融政策の独立」は捨てないだろう(よって「ユーロ」のような単一通貨はありえない)。とすれば論理的に中国は徐々にフロートにむかうだろう。人民元がフロートすると、アジアはドル・円・元の為替レートが日々不安定になる。それを緩和するが「アジア通貨単位(ACU)」構想である。そうでないと、アジアは、他の条件にして一定なら、他地域より、為替リスクから「高コスト経済」になる。それはアジアの利益にならないし、世界のプラスにもならない。こんな議論で説得的だっただろうか?
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