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2008-12-09 00:00
起死回生の策は、何をしたいのかをはっきり言うこと!
入山 映
サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
「綸言汗のごとし」という表現が礼記に見える。綸言というのは本来皇帝、君主の言葉の意だが、ここは指導者というくらいの意味にしておこう。偉い人が一度発した言葉は、汗のように元に戻ることは出来ないし、戻すべきでもないという意味だ。この種の名言には、必ず対句のように反対の意味に解釈できなくもない表現があって、「過ちて改めざる、これを過ちという」という論語の一節などはその一つだろう。過ちは改めるに如くはないが、それにしても、こうも言葉が軽くては、信を喪うことは確かだろう。
麻生首相の「綸言」は出入り自在の汗のように見える。特異体質とでもいうべきだろうか。官僚の書いた作文を一字一句間違えないように読んでいるのではなく、アドリブを含めて「自分の言葉」で語りかけようとするのは、結構なことだ。しかし、その結果がこれでは、結局どなたの思うつぼなのかは言うまでもあるまい。自民党に人も多いだろうに、二代続けて政権を途中で放り出した首相の後に、圧倒的な支持を得て選出された首相が、この有様では、そろそろ末期的症状だと見放されても仕方があるまい。
起死回生の手段がない訳でもない。何も自民党政権の延命のためではなく、国民の信を喪いかかっている政治というものを立て直し、日本経済の底固めをする、という本来の使命のためだ。もう一度汗を引っ込めて頂いて、今国会に再度補正予算案を提案し、現在ただいま内需喚起のために取りうる方策として現政権が持っているアイディアを、全て盛り込むことだ。たいした知恵がない(よもやそんなことがないことを願うが)のなら、それでも構わない。現在日本が抱えている諸問題のうち、喫緊のものが景気回復だと本当に考えているのなら、そのメッセージを明確に伝えることだ。気の利いた味付けや、シュガーコートはこの際かなぐり捨てて、真っ向正面から何をしたいのか、はっきり言明してほしい。
普通だったらしないことをやってみてこそ、禍いを転じて福とすることができる。ことはそれほどに深刻だという事態認識が必要なように思う。一国のリーダーが道化扱いされているのを放置するのは国民にとって不幸だ。
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