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2008-12-06 00:00
常任副議長だより(3):「第30回政策本会議」について
村上 正泰
東アジア共同体評議会常任副議長
今回の「常任副議長だより(3)」では、さる11月27日(木)に開催された第30回政策本会議について、所感を述べます。政策本会議とは、東アジア共同体評議会の活動の中核に位置付けられる会合であり、シンクタンク議員、有識者議員および経済人議員が一堂に会して直接対面の意見交換を行なうことにより、知識・情報の交換、問題意識のすりあわせ、戦略意志の共有を図る場です。
さて、当評議会では、3年前に『政策報告書:東アジア共同体構想の現状、背景と日本の国家戦略』(http://www.ceac.jp/j/pdf/policy_report.pdf)を発表し、各方面から多大な評価をいただきましたが、その後の東アジア共同体構想をめぐる諸情勢は大きな変遷を遂げています。そこで、当評議会では、本年3月より、上記『政策報告書』改訂版を作成する目的で、「東アジア共同体構想をめぐる動きの現状をどう評価するか」との総合テーマの下で、これまでに5回の政策本会議を開催してきました。今回は、6回目の政策本会議でしたが、「貿易・投資・金融分野における地域協力の進展と今後の課題」とのテーマで当評議会有識者議員である浦田秀次郎早稲田大学大学院教授よりご報告をいただき、出席した議員間で意見を交わしました。
浦田教授からは、興味深いデータをさまざま紹介しながら、最近の東アジアの貿易・投資動向を実証的にご報告いただきました。その中でも「東アジア諸国の輸出シェアをみると、かつてトップだった日本の輸出シェアが低下傾向をたどり、今や日本は中国、ASEANに次ぐ3位となっている」という事実から、地域統合の牽引力としての日本の重要性の低下を実感させられる一方で、「東アジア貿易の域内依存度は、東アジア全体ではわずかに上昇しているが、ASEAN、韓国、日本が上昇する一方で、中国だけは低下し、北米への依存度を高めている」という事実からは、地域経済統合の進展する中にあって、米中の相互依存関係が突出して強まっているという現実を、再認識させられました。
今後日本の採るべき方策については、浦田教授から「自由化と経済協力を結びつけてこの地域の発展可能性を高めていくことが重要だ」との指摘があり、「ASEAN+3、ASEAN+6、APECのいずれを重視すべきかの点については、いまそれを決める必要はない。東アジア共同体という目標を掲げて、それぞれの道を進んでゆけば、かならず道は開ける」とのまとめをいただきました。私もまったく同感です。東アジア共同体構想については、賛否の立場の違いを問わず、しばしば「こうでなければならない」との一方的な決めつけが先行しがちですが、重要なことは、東アジア共同体という長期的な目標を見失わずに、さまざまな枠組みを重層的に組み合わせて、成果を一つずつ積み上げてゆくことではないか、と浦田教授の報告を聞きながら、改めて思いました。
なお、昨今の金融情勢や東アジア地域協力における金融協力の重要性を踏まえ、「金融分野」については別途それだけを取り扱う政策本会議を追加開催することとなり、今回の政策本会議のテーマからは「金融分野」という言葉を削除することになりました。今回の政策本会議の「速記録」につきましては、近く当評議会のホームページに掲載されますので、ご関心のある方はそちらをご覧ください。
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