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2008-12-05 00:00
クオ・ヴァディズ:米国はどこへ行くのか
進藤 榮一
筑波大学大学院名誉教授
クオ・ヴァディズ(汝どこへ行くのか)。7月にバンコク、8月にインドネシア、9月にハノイとラオス、10月に名古屋。アジア各地の国際会議出席と現地滞在を繰り返しながら、私の心はいつも、海の向こうの帝国の行方を問い続けていた。いったい米国は、どこへ行くのか。予想通りオバマ氏は勝利し、8年間のブッシュ政権は終わり、民主党政権の幕が上がり始めた。しかし人々は、米国と世界がこれからどこに向かうのか、期待と不安の入り交った目で、政権の行方を見続けている。
オバマへの期待は、前政権の政策失陥から来ている。ブッシュ氏は、大統領就任早々、京都議定書からも国際刑事裁判所条約からも離脱した。9・11事件を奇貨に、反テロ戦争の大義によって、アフガン戦争を開始し、イラク戦争につなげた。帝国のユニラテラリズム(反国際的一方主義路線)の展開である。だがそれは、「3兆ドルの戦争」(スティグリッツ教授)の泥沼を深めるだけで、財政赤字は5千億ドルを超した。その挙げ句に、サブプライム金融危機に端を発する世界同時不況の“津波”だ。いったいオバマ新大統領は、前任者の政策失陥をどこまで拭い去ることができるのか。同時不況の長い影を、どう光に変えようとするのか。
疑いもなく新政権は、前政権の政策の全面見直しから始めるだろう。すでに地球温暖化対策について、ゴア元副大統領を知恵袋に、EU(欧州連合)をしのぐ大胆なCO2削減策の検討に入っている。イラク戦争からは16カ月以内に米軍を完全撤退させる具体戦略が描かれ始めている。アフガン戦争での事態悪化の恐れは残ろうが、イランや北朝鮮、ロシア等への政策を含めて、米国外交は確実に、軍事偏重外交から、国際協調路線への転換を加速させるだろう。その中に、MD(ミサイル防衛網)配備の見直しも含まれる。だがこと、経済財政政策に関していえば、いくつも不安材料が重なってくる。
当然ながら新政権は、前政権下で進められた冨者優遇の「新自由主義」政策の転換から始めなくてはなるまい。ヘッジファンドやカネがカネ(富)を生み増殖させる、カジノ型の金融資本主義から、生産が富を生む「ものつくり」重視型の生産資本主義へと、経済を回帰させることだ。そして社会保障医療改革によって内需拡大の道を開くことだ。しかも巨視的に見れば、米ドルが国際基軸通貨として機能する条件は、もはやない。そればかりか米欧日だけが、世界経済システムを取り仕切りうる条件もない。その二重の現実が、先の金融サミットが、G7だけでなく、中国やブラジル、インドネシアなど新興工業国をも加えたG20によって開かれたことに象徴される。
戦後半世紀にわたり続いたブレトンウッズ国際金融体制が、いまドル一極集中体制とともに、崩れ始めているのである。いったいオバマ新政権は、この新しい現実をどこまで把握し、いかに新しいポストブレトンウッズ体制の構築に協働していけるのか。オバマ新政権の政策課題は、そのままわが国の政策課題と重なり、私たちに問い続ける。その問いが、バンコクからハノイ、名古屋の旅で見た「ものつくり」工業立国の原点へと、私の心を立ち返らせていた。
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