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2008-11-30 00:00
3番目の危機でアジア統合は大きく進展する
山下 英次
大阪市立大学大学院教授
11月26日付け本欄で、村瀬哲司教授が麻生総理の「ドル体制を維持すべし」との意見表明について、大局を誤ったものだと述べておられるが、私も全く同感である。今次危機によってドル体制は揺らぐであろうし、また日本としても、むしろ基軸通貨体制の多極化促進に向けて行動すべきときに来ている。また、依然として、アメリカ1国のみが拒否権を持つような古い「封建的な体質の」IMFに、わが国として1,000億ドルを拠出しても良いなどと、この時点で安易に提案するのは論外である。こうした提案をするとしたら、その際は「IMFガヴァナンス(統治構造)の抜本的変革と引きかえに」という厳しい条件を付けるべきである。これまでのような単なる対米協力一辺倒の外交姿勢では、わが国の国益に著しく反することになる。私がこれまでずっと主張してきたように、日本とアジアは、米国と同じ船に乗っているわけではないし、また乗っているわけにもいかない。今次米国発の危機で、それがより一層はっきりしたのではないだろうか。
これまで、アジア統合は、2つの大きな危機をきっかけに進展してきた。第1回目は、プラザ合意後の超円高に対応した日本企業によるASEAN諸国に対する直接投資の急増である。それが始まりとなって、いまや東アジアには、製造業の生産工程別分業の非常に緊密なネットワークができている。すなわち、東アジアにおいては、すでにインフォーマルな経済統合は出来上がっている。こうした緊密な生産・流通のネットワークは、東アジア経済の宝である。第2番目の危機は、1997年アジア通貨危機である。それをきっかけに、政府間の合意を伴ったフォーマルなアジア統合の動きが出てきた。具体的には、2000年5月のチェンマイ・イニシアティブ(CMI)が嚆矢となった。
今次危機は、またもや米国発であったということもあり、これをきっかけに、外的なショックから自分たちをプロテクトする目的から、世界各地で地域統合の動きが間違いなく加速化されることになるであろう。当然のことながら、特に金融面で顕著な動きがみられるであろう。すでに合意されているCMIマルチ化の動きを加速化することや、本格的な域内経済サーベイランス・メカニズムの導入のために、CMIの常設事務局を設置すべし、といった動きなどが出てきている。日本の外務省と経済産業省は、このところ16カ国の東アジア・サミット(EAS)の方を重視してきたが、こうした金融面での動きは、これまで通り、日本では財務省が中心となり、「ASEAN+3」(APT)の13カ国の枠組みで進展することになるであろう。
2005年以来、APT13とEAS16の2つの地域枠組みが併存することになってしまい、エネルギーが分散されたこともあり、このところアジア地域統合の動きは停滞していたが、今次危機でそうした時代も終わり、今後、再びアジア地域統合の動きが活発化するであろう。日本政府は、そうした好ましい動きに竿をさすようなことは断じてしてはならない。
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