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2008-11-26 00:00
世界金融危機の深層原因にどう対応するか
村瀬 哲司
龍谷大学教授
米国サブプライム問題に端を発した世界金融危機は、実体経済に深刻な影響を与えつつ、なお回復への見通しがないままでいる。すでに多くの論者が今次金融危機の原因を論じているが、私は原因を表層、深層、深深層に三分類できると考える。表層の原因は、米欧金融規制の不備と金融工学への過信である。深層の原因は、節度を失ったドル基軸通貨体制であり、以上の表層、深層原因は政策対応が可能である。もう一つ深深層の原因は、人間のあくなき欲望、業、愚かさであり、これは対応不能である。
ここでは深層原因であるドルの基軸通貨体制について注意を喚起したい。戦後63年間今日まで、米ドルは世界の基軸通貨の座にある。1971年までは金兌換の義務により、米国はインフレ抑制、国際収支均衡の節度を求められたが、その後は基軸通貨国として責務を負うことなく、特権のみを享受してきた。特に過去5年間、アジアなどからの巨額の資本流入と低金利が、米国の過剰借り入れ体質を助長し、住宅バブル・破裂を招く結果となった。
11月14・15日のG20金融サミットにおいて、麻生首相は「ドル基軸通貨体制を支える努力をすべき」との立場を明らかにした。これは「G20がまず表層の原因に対処しつつ、景気回復に一致協力しよう。のど元過ぎれば熱さ忘れよう」と主張することに等しい。盟主米国の国益を慮るとともに、米ドルを大量保有する我が国としては「ドルの下落(円の切り上げ)を回避したい。中国も同調してくれるだろう。米国の経常赤字是正については、従来からわが国は貯蓄率引き上げを主張してきたし、これからも主張する。将来また米国でバブルが発生するかもしれないが、その時対応すればよい」という主張だ。
この主張は大局を見誤っている。サルコジ仏大統領が言うほど極端ではないにせよ、国際通貨体制はゆっくりとであるが、明らかに二極・多極体制に向かっている。要は、市場が米国に節度を強制し、また欧州が今回暴露した様々な欠陥を是正するであろう間、ドル・ユーロの二極通貨体制に如何に軟着陸させるか、につき案を巡らせるべきである。市場競争を通じて複数基軸通貨の具体的な姿が浮かび上がるだろう。しかし、その体制は不安定にならざるをえない。従って、IMFの統治機構を抜本改革し、真の通貨の番人に改組することにより、将来の通貨体制の不安定性を補うべきである。
東アジアはASEAN+3プロセスを活用して、域内国の国益を守らなければならない。「チェンマイ・イニシャティブの多角化と経済サーベイランスの抜本強化により、危機対策を促進する」と新聞は報じる。これは大いに歓迎される。さらに一歩進んで今後、東アジアがドル・ユーロの狭間で翻弄されないためには、域内通貨の為替安定メカニズムについて検討を始めるべきである。この問題は、かつて東アジア・スタディ・グループが中長期的課題として掲げていたが、「東アジア協力に関する第二共同声明」で落とされてしまった経緯がある。今こそ域内各国は話し合いの場に着くときである。
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