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2008-11-17 00:00
中国・ラオスに見る地方行政システム強化の必要性
武石 礼司
東京国際大学教授
中国、ラオスといった共産党の一党独裁の政治体制をとる社会主義国において、地方行政システムをどのように育てていくかが、各国の課題となっている。筆者は今夏、中国およびラオスの農村地域を訪問する機会を持ったが、いずれの地域においても、経済の近代化に不可欠な「中央行政機関の意向が地方に伝達される経路」において様々な課題が存在していることを実感した。いずれの国も独立の獲得のため、地方の党組織が大きな役割を果たしたという歴史がある。このため、地方の党組織が、地方行政機関(あるいは中央行政機関の出先)と比べ、強い発言権を持っていた。こうした傾向は、党の組織としての村長が存在しても、行政機構の意向が伝達される経路が不十分であることを意味する。
例えば、中央政府(即ち中央行政機構)が、末端の農村に向けた地方の舗装道路建設の資金を拠出しても、筆者が見聞したように、当該の地方農村への6m幅の舗装道路が次第に狭くなり、1車線の3m幅の舗装道路となり、さらに最終的には舗装がない泥道となって地方の農村に到達する場合も生じる。地元農民に聞くと、当初中央政府予算では6m道路が村まで来る資金が拠出されたにも関わらず、途中で資金が車等の購入代金に着服されてしまっている、のだとの不満が聞かれた。資金の配分において問題があるとなると、まして中央行政機関からの近代化に向けた指示の徹底は困難である。農薬使用の適正化、乳製品への不適切な薬品混入問題等様々な課題に、適切・即時の対応を行っていくための地方行政機関の設置・強化が不十分であることが、農村の調査を行うと明らかとなる。
一方、今後仮に末端の農村までを対象とした地方行政機関の強化が行われたとすると、今度は党組織との二重の指示ルートが存在することを意味してしまう。農村に居住する農民にとっては、どちら側からの指示を優先させるべきか、という問題が生じてしまう。ただし、中国の農村のように一日移動しても同じトウモロコシ畑の景色が続くというように、国土が広く、国力も強い国においては、「農村都市化」、「小城鎮」といった国家資金による力ずくの開発体制が維持できてしまう部分がある。このため地方行政のきめ細かな育成というニーズが満たされるまでに、長い時間を要してしまう。この点、中国よりも早く、例えばラオスにおいては、地方行政機関の強化をいかにして図るかという課題が、より早く「顕在化」すると考えられる。
ラオスでは、アセアン加盟後の関税引き下げスケジュールが進行中で、中央行政機構の強化が図られており、地域別の管理メカニズムから、中央集権的な部門別管理メカニズムへの転換の最中である。一方、政治組織に関しては、党中央の直接の指揮下、地方に党機関を設置し、地方行政に対するチェック機能を維持する動きが生じている。そもそも、地方行政機能の強化こそが、一人当たり所得の向上を確実にする方策であることは間違いない。道路・電気等のインフラ整備、土地管理、経済活動全般の管理、財政制度、社会保障、教育等まで含めて、地方行政機関の強化は必須である。しかも、地方行政機能と地方党機関との業務分担をわかりやすい形で提示することも同時に必要となる。地方の近代化を進めるために、困難ではあるが、早急に取り組まなければならない課題となっている。
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