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2008-11-13 00:00
(連載)北朝鮮の変化に中国はどう対処するか(2)
武貞 秀士
防衛省防衛研究所統括研究官
その4 北朝鮮の内部動向を注視する中国に対して、東北工程が絡んでの関心ではないか、と韓国は懸念を抱いている。「高句麗は中国の地方政権であった」という「根拠」が中国の北朝鮮への軍事介入の根拠になる、という指摘をする韓国人専門家もいる。韓国の懸念を中国がどう配慮するかは不明である。
その5 韓国は中国と国交があり、中国と韓国の経済関係は、いまや北東アジアを動かす大きな要素である。中国が軍隊を北朝鮮に送る決断をするとき、韓国の民族意識を刺激してしまい、中国と韓国の関係が一挙に冷却することを、中国は知っているだろう。韓中関係が破綻することのリスクは、北朝鮮の危機状態収拾に乗り出し、成功したときの果実を考えると、計算が合わないことを中国は知っているのではないか。
その6 90年代までの朝鮮半島と、現在の朝鮮半島では条件が異なる。北朝鮮は2006年10月9日に核実験を終えて、核保有宣言をした。そのとき「100パーセントわれわれの技術で核実験を実施した」と発表をしている。これは「中国とロシアに依存しない兵器を保有するに至った」という意味であり、「中国とロシアから軍事的に自立した」という宣言でもあった。北朝鮮の大量破壊兵器開発の背景には、北朝鮮の中国とロシアに対する民族主義がある。中国の北朝鮮への軍事介入を北朝鮮がやすやすと受け入れるとは思えないし、北朝鮮が受け入れてくれると中国は思っているのだろうか。
その7 南北の関係を考えよう。南北首脳会談が2度実現して、韓国の南北協力基金が機能している。韓国が「危機管理状況下の北朝鮮」という状況を前に、米国、中国、日本の介入を許すだろうか。6か国協議が米中、米朝主導で進むときでさえ、韓国は心穏やかでなかった。北朝鮮内部の異変という事態を迎えたとき、韓国が最初に心配するのは、韓国が除外されることなのである。
その8 北朝鮮の異変に際して、中国は迷うことなく積極介入するという議論があるが、「大事な友好国であり、唇歯の関係であるが、もっとも理解困難なイデオロギーを持った国家」と中国は見ている。良くわからない所に軍を投入し、首尾よくいって「もともと」で、うまくいかないときの軍事、外交上のダメージが計り知れないことは、容易に想像がつく。中国はその計算ができない国だろうか。
その9 以上のことを考えると、北朝鮮の内部政治が急速に変化し始めるとき、中国の動きだけが突出するのではなく、韓国と中国の対立とけん制、米国と中国のかけひき、それに北朝鮮の内部変化が絡みあう、という複雑な様相が浮上するのではないだろうか。(おわり)
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