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2008-11-07 00:00
東アジア共同体構築に水をさす中国の軍拡
石垣泰司
東海大学法科大学院
東アジア共同体構築に向けての地域関係諸国の取り組みにはかばかしい進展がみられないのは、現在の地域全般的情勢に照らしやむを得ないとしても、政治的・経済的・文化的地域協力は、すべて平和的共存・協調の精神を前提として進められてきていることはいうまでもない。しかし、他方において、地域関係諸国が国防・安全保障の見地から、自国に対する現存のまたは潜在的な脅威に対処しうるに必要な相応の軍事力を保有していることも厳然たる事実である。これら諸国の軍事力が適切なバランスを保持していれば大きな問題とはならないといえる。
しかるに、先日つくば市で開催された国際政治学会の秋の研究大会の部会で「宇宙をめぐる国際政治」が取り上げられ、日本、米国、中国の宇宙戦略についての報告が行われた。そのうち茅原郁生氏(拓殖大)の中国についての報告は、1970年の「長征1号」より本年9月の船外活動を行った有人衛星3号の「新舟7号」いたるまでの、詳細なデータによる、中国の宇宙の軍事的利用を明確に意図した中長期的軍事戦略を示すもので、中国軍部の深慮遠謀を思い知らせるものであった。
中国と日本のロケット打ち上げは、日本の方が早く、中国はずっと遅れてスタートしたのにかかわらず、日本の場合は、当初より今日まで徹頭徹尾、平和的な科学技術研究の観点のみから行われてきたのに対し、中国は、当初より今日まで共産党政権の指導の下人民解放軍の手でなされ、軍事用ミサイル開発と一体となっており、衛星乗員もすべて軍人で、発射基地も1カ所の日本に対し、中国は各地に多数の発射基地を展開させており、しかもすべて軍の施設であるという。
このように、今日ではわが国は、宇宙戦略では中国に完全に水をあけられ、その軍事的側面についての研究も極めて立ち後れ、本年5月の宇宙基本法の制定によりやっと防衛上の人工衛星の利用に途が開かれたにすぎない。その上、中国の軍事予算は、内容不透明なまま、二桁の伸び率で増加し続け、その潜水艦がわが国近海に頻繁に出没し、わが国海峡も通過するようになった。友好親善のためとして中国軍艦が時折わが国を訪問し、両国軍関係者間の友好的交流も行われているようであるが、その陰で進行している中国の軍事力の肥大化の現実に注意を怠ってはならないと思う。このような特定の地域大国の軍事力の突出は、当然のことながら東アジア地域内の軍事的バランスを崩すことともなり、東アジア共同体構築への機運に水さすものといえよう。
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