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2008-10-31 00:00
(連載)資源保有国は強者で非保有国は弱者か(2)
袴田 茂樹
青山学院大学教授
たとえば、最近のエネルギー資源をめぐる中露関係を見ると、価格問題で中露はなかなか折り合いがつかず、関係が複雑化している。ロシアは資源保有国で中国は資源購買国であるが、必ずしもこの交渉でロシアが強者の立場にあるわけではない。中国は、トルクメニスタンやカザフスタンからより安く石油や天然ガスを購入するための手を打って、ロシアとの価格交渉に臨んでいる。ロシアはエネルギー資源保有国であるが、欧州にエネルギーを輸出するために、これまでは中央アジアからもエネルギーを国際価格よりかなり安く購入してきた。中央アジアも、ロシア経由以外に輸出ルートがないとなれば、ロシアの要求を呑む以外になかった。しかし、状況は変わり、ロシアは中国に中央アジアのエネルギー資源を取られないために、今年の春からは購入価格を大幅に引き上げて、国際価格で購入することを申し出た。
つまり、資源保有国のロシアが、資源を保有していない国から「弱者の恫喝」を受けて、長年低価格で購入していた中央アジアの資源を、やむを得ず高価格で買うようになったのである。2005年秋に、プーチン大統領と懇談する機会があった。シベリアの石油パイプラインを中国の大慶に結ぶか、太平洋岸に結ぶかが問題となっていた時で、それまで日本は太平洋岸に結ぶようロシアに強く働きかけていた。懇談の場でプーチン大統領は、「パイプラインは最初に中国と結ぶが、われわれは需要国が一国となることを望まない。したがって油田を開発して、太平洋岸にも必ずパイプは結ぶ」と述べた。これは日本に対するリップサービスではなく、交渉の常道から考えても戦略的見地から考えても常識的な本音である。中国だけとパイプラインを結ぶと、価格決定権を中国に握られてしまうからだ。これらの点を考えると、日本が弱者の立場で腰を低くして頼み込む性質の問題ではないはずだ。
シベリアやロシア極東のエネルギーの購入を中国が拒否した場合、ロシアは資源を国内市場に回すか、それを他国に輸出するためのインフラを整備する必要がある。また確実に購入してくれる輸出国を確保する必要もある。中国としても弱者の立場に甘んじないためには、カザフスタンやトルクメニスタン、その他の国からの輸入体制を整備するという大きな努力が必要であった。つまり、ロシアにのみ依存するという状況を脱して、初めて「弱者の恫喝」も可能となるのである。(つづく)
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