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2008-10-22 00:00
世界金融危機が中国の路線、体制に及ぼす影響
細川 大輔
大阪経済大学教授
米国のサブプライム・ローン問題に端を発した金融危機は、世界の実体経済に影響を及ぼしはじめている。特にこれまで高成長を謳歌してきた中国には、輸出の鈍化という形で現れてきた。2008年第3四半期のGDP成長率が前年同期比9.0%となり、1ケタ台に減速したと伝えられている。しかし筆者は、こうしたマクロ経済指標の悪化よりも、華南にある中国の大手玩具メーカーが輸出不振で倒産し、給与支払いの滞った従業員が地方当局を訴えて暴動を起こした、といったニュースの方に不気味なものを感じる。
そもそも企業の倒産は経済問題であり、企業と従業員の間で経済的に解決されるべきものである。両者で解決できない場合は、司法の場で解決を図るのが近代国家のルールである。ところが中国では、経済問題がいきなり政府への抗議行動となっている。その要因としては、まず中国は市場経済を導入したとはいえ、政治的には社会主義を堅持している。政府は国民経済を管理しており、最終的に政経不分離なのである。そのため、米国発の金融危機による企業倒産であっても、すべての経済問題は直接、共産党政府への非難と抗議行動へと繋がるのである。
もう一つは、中国が未だ法治国家ではなく、人治国家であるということであろう。共産党政府は法治を実現したいようではあるが、共産党支配と矛盾する面もあり、実現には気の遠くなるような時間が必要だ。それゆえ、中国民衆は最終的には、暴力を伴う政府への直訴という時代離れした表現手段しか持ち得ない。一方、こうした状況の中で多くの民衆は、携帯電話という連帯のための新しい武器を持つようになったのである。
中国はこれまで、高度成長を持続し、国民一般の生活水準を高めることにより、官僚の汚職、工業化による環境悪化、土地立ち退き問題などで、民衆の不満が爆発することを何とか回避してきた。世界経済の長期にわたる拡大がこれを支えてきた。しかしながら、いま始まろうとしている世界的大不況は、中国のこの路線が今後維持できるかどうかに、大きな影を落とそうとしている。
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