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2008-10-13 00:00
(連載)ガバナンスは、21世紀最重要の課題(4)
廣野 良吉
成蹊大学名誉教授
わが国を例にとっても、それぞれの組織、地域社会によって、定着している統治形態(ガバナンス)は多種多様な段階にあり、また生産、流通、教育、医療、環境、福祉、政治等の活動分野によっても多種多様である。一般に、民間活動分野よりも、公的活動分野のほうが、ガバナンスの如何が問われている。同様に、消費者、住民の生活に密着した活動分野では、その活動の効率性、費用対効果だけでなく、その活動の「過程」における統治形態が、重視されているといってよいであろう。
また、国際社会でも同様で、一般に、経済社会発展がより成熟した先進諸国では「良いガバナンス」が一層普及しているか、その実現へのあらゆる主体の努力が顕著となっているのに対して、その成熟度が低い途上国では、「良いガバナンス」が欠如しているか、その方向への転換が徐々に始まっている段階にある。これは、世界銀行、国連開発計画等の公的国際機関やIDEA、Freedom House等の国際NGOが定期的に発表している「ガバナンス指標」をみれば、歴然と現れている。また、国際連合、その他の公的国際機関や国際NGOでは、先進諸国がその構成員ということもあって、途上国や一部高所得国の国内組織(公私を問わず)以上に、ガバナンス問題が重視されているのが観察されている。
さらに、「良いガバナンス」への移行過程もその時間的期間も、組織、地域社会、国によって異なるのは当然であろう。富士山へ登るスピード、方法は多種多様であるのと同様である。各組織、各地域社会、各国にはそれぞれその歴史、文化、伝統、社会構造があり、民主的ガバナンスへの移行のロードマップは、それぞれが主体的に決めることであり、その結果、多種多様な方法、スピード、特徴があっても不思議ではない。国レベルでいうならば、日本には日本型ガバナンスがあり、第2次世界大戦後観察されたその民主的ガバナンスへの移行は、正に日本人の意識、文化、社会構造の土台の上で実現された。民主化導入が、たとえ米国を中心とする連合軍の指揮下で実施されたとしても、現在自ずから日本型民主的ガバナンスが成就し、現在もその進化過程にあるといってよい。同様なことは、韓国、中国、インド等でもいえる。大切なことは、人々が「良いガバナンス」への多種多様な移行過程を認め、多種多様な民主的ガバナンスを認め合うことである。
ガバナンス問題は、非常に政治的に「敏感な」課題であり、いずれの主体も、いずれの国も、他者、外国、国際機関からの「特定のガバナンス」体制(民主的であろうとなかろうと)の押し付けを極度に嫌う傾向にある。わが国を含めた多くの国々で、「アメリカ型民主制度」の押し付けを嫌っている人々が多いのは、その良い例である。しかし、いずれの社会でも、人々は自分の組織、地域社会、国に適した「良いガバナンス」の導入には賛成し、意欲を燃やし、それを如何に実現するかを模索しているといってよい。国際社会は、その多種多様な民主的ガバナンス体制を認め、その樹立と成熟過程を尊重しあうことが肝要である。(つづく)
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