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2008-10-10 00:00
タイとミャンマー軍政の蜜月関係
入山 映
サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
タイの政情が一向に落ち着かない。どころか、いっそう混迷の度合いを深めている。2006年にはタクシン政権打倒のためにクーデターを起こした国軍も、今回は今のところ静観を決め込んでいるし、これまでのパターンであれば、秩序回復のために表舞台に登場する国王にも、全くその気配が見えない。それもその筈で、汚職のかどで英国に亡命を余儀なくされたタクシンの後には、かれの傀儡視されているサマックが首相に収まり、サマックがテレビの料理番組から出演料を貰っていた(!)として、憲法裁判所に罷免されると、その後をタクシンの義弟が継ぐ、という有様である。
それでは首相官邸を占拠し、国会議事堂を封鎖しようとして、警察に排除された反タクシン勢力の民主主義市民連合(PAD)が白馬に乗った正義の騎士かというと、タクシンによって利権から排除された旧支配勢力が後ろで糸を引いている、という説まであり、いまひとつ国民の支持が盛り上がっていない。もちろん、街頭での反政府行動は誰かが後ろにいるという説は、ミャンマーの軍事政権がかつて僧侶たちを弾圧したときにも用いられたレトリックだから、にわかに信用は出来ないが、先に述べた軍や国王の動向からして、全くのガセネタという訳でもなさそうだ。事態収集にはもうしばらく時間がかかりそうだ。
ミャンマーといえば、タクシン一派に連なる人々がミャンマー軍事政権と国境密貿易を共同管理していたというのも公然の秘密だ。タイが軍事政権に対する制裁に反対し、建設的関与を唱えるのに対して、「彼らと同一視されるのはご免だ」という声がASEANにおいて聴かれていた。さほどにタクシン政権とその後継者の軍政擁護ぶりは、なりふり構わぬ一貫したものだった。テレビの料理番組に出て罷免されたサマックはプロはだしの料理上手だ。日本のメディアでは報道されていないが、ミャンマー軍政のトップたちのために自慢の料理の腕を披露したのは、余りの「すり寄り」ぶりで、タンシュエ議長は側近に軽侮の念を表明したとも伝えられている。世の中一筋縄ではゆかないものだ。
さて、イラワディ誌のアウン・ザウ氏が危惧するように、街頭デモを武力で押さえ込んで「民主」政治を実現しようとするミャンマーのお手本を、タイ政府も見習うのだろうか。そしてタイと軍政の蜜月関係はこれからも続くのだろうか。
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