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2008-10-09 00:00
(連載)「中国発展モデル」をどう見るか(2)
関山 健
東京財団研究員
経済成長という点において、中国政府がすべきことは、景気が過度に浮き沈みすることのないように平準化する努力と、中国が本来持つ成長力を十分に発揮する努力くらいである。むしろ、中国政府が今後真剣に取り組むべき「中国発展モデル」上の問題は、格差や環境破壊などである。これらは、経済成長の果実の再配分に関する問題と言い換えることができよう。政府の積極的な介入が求められる問題とは、市場の資源配分メカニズムに任せておいては解決できない問題である。この点、格差の是正や環境保護は、自由な市場競争が生み出す負の影響であり、まさに市場の資源配分メカニズムに任せておいたのでは解決できない問題である。
特に格差の問題は深刻である。なぜなら、政権の有効性や正当性に対する疑問を大衆に抱かせる最も典型的な要因は、庶民の生活苦だからである。ここで注意すべきは、格差の存在や拡大そのものが問題ではない点である。日本でも、多くの専門家や識者が「中国では格差が広がって、社会不安が高まっている」と解釈している。しかし、都市世帯も農村世帯も「昨日より今日、今日より明日の生活がよくなる状態」にあり、この傾向が続く限りは、格差が開いたところで下層の人々も、現体制の有効性や正当性を否定してまで、現状を変えたいとは望まないだろう。
事実、今年第1四半期の都市住民世帯の可処分所得は対前年同期比11.5%、農村住民世帯の可処分所得は対前年同期比18.5%も上昇した。ただし、最近の中国では、物価上昇や景気の減速によって一部の人々が「昨日より今日、今日より明日の生活がよくなる状態」を享受できなくなっている、と私は見ている。明日の生活に失望した人間は、自暴自棄になって何をするか分からない。これこそが、今の「中国発展モデル」が抱えている最大のリスクであろう、と私は考えている。
したがって、明日の生活に対する希望を失いかねない困窮者の救済こそ、中国政府が取り組むべき最も重要な課題であろう。そのためには、中国政府は、低所得者への生活保障提供、全国民への社会保障提供、資産家に対する相続税導入、内陸部への財政援助など、経済成長によってもたらされた所得を従来以上に積極的に再分配していくことが必要だ、と私は考える。(おわり)
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