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2008-10-04 00:00
(連載)東アジア・シンクタンク・ネットワーク6年間の歩みを評価する(2)
石垣泰司
東海大学法科大学院非常勤教授
その後、クアラルンプール(2006年)、シンガポール(2007年)での年次総会を経て、バリ島(2008年)での年次総会が開催され、主催国インドネシアがとりまとめた原案をもとに「政策提言」が採択された。当初の草案には、東京総会で採択され、その後日本が毎年の「政策提言」に含まれるよう努力してきた「東アジア共同体の理念・原則」の重要な構成要素である「グッド・ガバナンス、法の支配、民主主義、人権および国際法規範を含む普遍的価値」への言及が落ちていたのを、日本代表団が指摘し、復活させた。ただし、これまでは激しい抵抗を押し切っての復活であったのに対し、今回は何らの抵抗もなくすんなり認められたという。また、「政策提言」作成の基礎作業となるテーマ別作業部会の活動状況を見ても、従来からの「金融協力」、「投資協力」のほか、「環境協力」、「文化交流」、「移民労働」、「NEATの将来」などを含む多彩なものとなっている。
さらに、今回の年次総会と同時に開催された国別代表者会議では、東アジア・シンクタンク・ネットワーク(NEAT)の「設立運営規則」の全面的な見直しが提案され、今後1年間をかけて審議に取り組むこととなった。また、NEATの公式ウエッブサイトの運営を、これまでは中国に任せ切りにしていたものを、今後は日本、韓国、シンガポールも参加する編集委員会を設置し、そこでの合議に基づいて行うように改めた。
このようなNEATの漸進的発展は、歓迎すべきことであり、高く評価される。この過程で、次第に明確となりつつあることは、NEATがセカンド・トラックの組織であるといっても、加盟各国の活動はそれぞれの政府の意向をかなりの程度反映したものであるということだ。その意味で、どの国が強い熱意を有し、どの国が消極的であるか、ということは重要な意味をもつ。これまでの年次総会を主催した中国、日本、マレーシア、タイ、シンガポール、インドネシアは、比較的積極的に活動していると言ってよいであろう。これに対し、韓国(ただし次回総会開催に同意)、フィリピン(バリ総会に欠席)、CLMV国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)の参加姿勢は、受け身であり、弱いと言って差し支えあるまい。
NEATが、セカンド・トラックの国際組織として、これまで着実な歩みを示すことができたことについては、上記の事例からも分かる通り、わが国関係者の貢献が少なくなかったといえる。NEATで行われていることは、いずれ東アジア共同体そのものが浮上してきたときに、その取り組み方に通ずるものであり、そのことを思えば、今後わが国は東アジア共同体に向けての地域協力において、セカンド・トラックのみならずフアースト・トラックでも、主体的な役割を果たすことが必要かつ賢明だと言えよう。(おわり)
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