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2008-10-01 00:00
(連載)阿南前中国大使 の講演を聴いて(1)
入山映
サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
9月25日の内外情勢調査会の講演会で、阿南惟茂前中国大使の中国情勢についての話を聞く機会があった。2006年の退官以来あちこちで講演行脚を続けられているようで、すっかり場慣れした様子であり、滑らかな語り口でおよそ一時間半、聴衆を飽きさせなかった。外務省内の所謂チャイナ・スクールの重鎮として、かつてはマスコミから「中国べったり」と批判されたことが念頭にあるのか、講演の中味は中国の虚像とも言うべき点、つまり過度にプレイアップされた中国のイメージの否定が中心であった。
「中国国家統計局の公表数値は、全く客観性に欠ける。中国にとってこうありたい数字の公表が中心であることを忘れてはならない」とか、「国威発揚手段として全力を傾注したオリンピックだったが、そこに中国国民の姿を見ることは余りにも少なかった。かえって空々しさを感じた向きが多かったのではないか。むしろIOC会長が述べたように、世界が中国の姿を現実に見たと同じく、中国も世界の現実の姿を見た、というほうが大事ではないか。また、オリンピックに4兆円余りの投資がなされたというが、ヤンキー・スタジアムが何十個も建てられるオカネがどこに使われたのか、おそらく半分以上はどこかに消えているのではないか。中国の外貨準備高1.8兆ドルを単純に日本の1兆ドルと比較して、その大小を論じても意味がない。中国のそれは外貨国家一元管理の下に吸い上げられた数値である。7500万人の党員を擁する中国共産党政権が、一朝一夕に崩壊するはずがない、という議論があるが、ソ連の崩壊を経験しているわれわれとしては、にわかにそのような安易な観測に同調する訳にはゆかない」とか。
こうした断片的な事実を巧みにアレンジして、中国の脆弱とも言える一面を描写してゆく。同大使が最近の『学士会会報』(872号)に寄稿された内容と同工異曲であるといってよい。在野の評論家の言説に較べれば、これまで要職にあって対中外交の先頭に立っていた方のコメントだけに、より重みを感じた向きも多かったと思う。しかし、中国経済がどれほど早く行き詰まり、あるいは破局を迎えると思うのか、それはどのようにして起こるのか、中央集権から地方分権への動きはあり得るのか、またどのように起こるのか、中国西部の少数民族問題との関連はどうか、それに対する党中央の動きはどうか、といった問題については、ほとんど触れられなかった。大聴衆を前にしての講演は、そうした問題に触れるのに適当な場ではないことを割り引いても、いささか消化不良の感を免れなかった。さらに、フロアからの質問を取らず、代表質問という形で時事通信(この講演会の主催者は同社関連団体)の部長職が質問をしたが、これが「麻生・小沢両氏の対中スタンスはいかに」とか、「最近の国際金融危機と中国経済の関連は」といった、およそ焦点の定まらないものものであったことも、その一因であったかもしれない。(つづく)
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