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2008-09-22 00:00
過渡的な時期に入りつつある北朝鮮
武貞秀士
防衛省防衛研究所統括研究官
北朝鮮指導部内で何か変化が起きているのではないか。9月9日、建国60周年を迎えた北朝鮮の記念行事の様子は異例ずくめで、閲兵式の壇上には金正日国防委員長の姿がなく、正規軍の行進は取り止めとなり、民兵が午後に行進した。周到な準備をして、満を持して開催にこぎつけた建国60周年祝賀行事としては、異例の内容であった。ただ、金永春・国防副委員長が演説のなかで「主席と党の指導のもとに新たな高い段階で輝かしく実現された全民武装化方針の正当性と生活力、先軍朝鮮の不敗の痕跡を内外に示すものだ」「自衛的戦争抑止力を引き続き強化していく」と述べて、核兵器の維持を確認した。慶祝報告では、「先軍は朝鮮の全歴史を貫いている革命路線」だとして、「強力な国防力は先軍朝鮮の自主的尊厳の象徴」だと強調し、金正日路線を確認している。深刻な事態が発生していれば、「慶祝」の文字はあまりにも不自然である。金正日が建国60周年の行事に出ることができなかったのは、深刻とまではいかない、突発的な事態が起きたからとみるべきだろう。
数々の報道から、北朝鮮の体制が過渡的な時期に入りつつあるのは事実だろう。そのとき、多くの問題が出てくる。軍事的には、北朝鮮内部が混乱したとき、北朝鮮の核兵器の管理はどうなるのか。大量破壊兵器を持った状態で部隊同士が混迷を深めるのか。朝鮮人民軍の将軍らが一致団結を維持できるのか。60代から80代の将軍たちの間に亀裂はないのか。金正日一家の権力継承に将軍らはどう関与するのか。朝鮮労働党と朝鮮人民軍の関係は、緊張関係に転じることはないのか。6か国協議での北朝鮮核申告問題は、今回の騒ぎでしばらく棚上げになり、米国の指導力低下が出始めた。そして、中国と北朝鮮指導部の関係が緊密であることが判明しつつある。中国がどこまで北朝鮮の安定を支援するのか。中国の北朝鮮に対する影響力強化を、韓国はどう捉えるのか。朝鮮半島への干渉と見るのか。
北朝鮮で危機的な事態が発生するとき、米国と韓国は危機にどう対処するのか。過去10年間の米韓同盟の変化は、北朝鮮の異変に際して、どう機能するのか。その情報を、米国、韓国、中国、日本がどこまで共有するのか。様々な問題が提起された。北朝鮮の今後は、(1)金正日を中心とした体制を朝鮮人民軍がサポートする場合、(2)脱金正日時代が始まる場合、(3)四分五裂して混迷を深める場合の3つのシナリオしかない。いずれにしても、北朝鮮の今後の動向に関連して、東アジアで中国と米国の役割がどう変化するのか、韓国は北朝鮮の変化のプロセスにどう対処しようとしているのか、が重要である。われわれとしては、北朝鮮の変化が、日本、韓国、中国、北朝鮮の間で、認識を共有する部分が拡がることにつながることを願わずにはいられない。
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