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2008-09-16 00:00
(連載)外交政策の一環としてのODAの戦略性(7)
廣野良吉
成蹊大学名誉教授
今後のアジア諸国の経済発展、生活水準の向上を考慮に入れると、わが国の対アジア地域外交政策の基本は、この地域全体の社会的・政治的安定や環境に優しい社会の構築と一部後発アセアン諸国と南アジア諸国の持続的な経済成長と良い統治の促進に焦点を絞ることであろう。その結果わが国のODA政策も、従来のように、その大半が途上国の経済開発、工業化、農業生産性向上、中小企業の育成、技術者・技能者養成という実態経済分野に限定されるものでなく、広く環境・社会分野、安全保障分野をも対象としたものにすることが望ましい。
今後のわが国のODA対象分野は、環境保護・保全、都市・農村地域開発、所得・富の格差是正と公正な分配、貧困の撲滅、社会保障計画の強化、汚職の廃絶、民主化と良い統治、人権の擁護、感染症の抑制・絶滅、マクロ経済政策の調整、空・海の安全航行、麻薬取引・マネーロンダリングの監視と摘発、テロ対策の強化、安全保障上の協力等多岐に及ぶものになるであろう。そのような広範な地域協力目標の効率的な達成に資するODA供与を実現する為には、国会の透明な審議と強力な支持の下でわが国の縦割り行政を排除して、官邸主導の国内支援体制の強化、技術・管理能力のみならず国際交渉能力をもった支援人材の早急な育成が不可欠である。この効率的な政策形成・実施のためにも、官僚のみならず、広く民間企業、大学、研究所、NGO等の人材の協力が得られるような国内支援・協力体制の整備が不可欠である。
官邸主導型の横断的かつ戦略的な対途上国政策の具体的提案として、以下の2つの提案の早急な審議、結論が重要と考えている。安倍晋太郎氏はかって外務大臣として活躍されていた当時、「緑の平和部隊」構想を発表していたが。この構想こそ早急に実現すべき構想である。この構想は、高校卒業2月と大学入学4月の間の1ヶ月間ないし9月入学までの4ヶ月間、開発途上国へ赴き、森林保全、環境教育に専念することを、国全体を挙げて支援するという構想である。「緑の平和部隊」は、単にアジア、アフリカ、中南米地域、ひいては地球全体の森林保全と地球環境保全に役立ち、世界の人々から日本人及び日本政府の貢献に多大の尊敬と感謝を得るのみならず、わが国若人の心身鍛錬に役たち、将来に対する大きな社会的貢献と希望と喜びを実感させることになると信じる。このことは,すでに30年間以上に及んで60カ国以上の途上国で活躍してきた「海外青年協力隊」に対する、途上国のみならず、世界の人々の尊敬と信頼で立証されている。
2006年の国連総会でブッシュ大統領は国際連合の下に、世界的な「民主化基金」の創設を提案した。これは、ドイツ、フランス、英国、米国、北欧諸国を初めとする殆どすべての先進諸国が、1970年代ないし80年代から、自国内に「民主化基金」を創設し、NGOを通じた途上国の民主化促進を助成してきたという歴史的経験に裏付けられた提案である。途上国の良い統治は、当事国の政治的安定に役立つのみならず、長期的な経済発展の基礎を形成し、国際的に事業展開しているわが国産業界にとっても必要条件であることは、疑いない。このことは、長年にわたる経済同友会の特別会員としての小生の経験からも確信をもっていうことができる。しかし大変残念ながら、わが国は先進国で唯一、かかる「民主化基金」を持たない国である。国内での「民主化基金」の早急な導入と世界的な「民主化基金」への拠出を提案する。(つづく)
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