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2008-08-24 00:00
タイの王室資産はだれのものか?
岡本雅和
会社経営
8月22日、アメリカの経済誌『フォーブス』が「世界の王室資産番付」を発表しましたが、本年は、タイのプミポン・アドゥンヤデート国王(ラーマ9世)が一躍トップに躍り出たということで、一部メディアで話題を呼んでいます。その推定純資産総額はおよそ350億ドル(3兆8千億円)、ロシアの年間軍事費に匹敵する金額です。第2位がアラブ首長国連邦のハリファ・アブダビ首長で230億ドル(2兆5000億円)、第3位がサウジアラビアのアブドラ国王で210億ドル(2兆300億円)ですから、彼ら産油国の王族組を大きく引き離してのダントツ1位です。今年に入り、タイの王室財産管理局がこれまでにない大幅な資産公開を行ったことが、この数字の背景にあるとのことです。産油国の王室資産とは異なるようにみえるタイの王室資産ですが、いったいどのような性格のものなのでしょうか。
たとえば、この『フォーブズ』誌の番付発表に対しては、タイの外務省が、「不正確で誤解を招く内容である」との非難声明を出しております。曰く「推定資産には、国王の個人資産以外のものが含まれている」と。そもそも君主国において、王族の個人資産と国家資産が峻別されていないということは、それほど珍しい話ではありません。それよりもなによりも、多少ともタイの王室の歴史をかじった者ならば、かつて、王室財産をことごとく失い、一時は王制存続の危機にすら瀕したタイの現王朝(チャクリー王朝)が、プミポン国王のカリスマ的な活躍と献身によって、今日の状態にまで見事に立ち直ったことに感慨を禁じえないことでしょう。不慮の死を遂げた兄の後を受け、1946年にラーマ9世として即位して以来半世紀以上にわたり、プミポン国王は幾多の国家的危機を乗り越え、失われた王室財産や種々の権限を徐々に回復させるとともに、国の発展を支えてきたといえます。
いまや軍事クーデタであれ、政権交代であれ、暴動であれ、最後に収拾をつけるのは国王でしかありえないこの国において、国王ないしは王室の権威が揺らぐことは、まさしく政治的安定の支柱を失うことにつながりかねません。それゆえ、その権威がプミポン国王の個人的資質によって担保されているならば、「いつまでもプミポン国王にはがんばっていただかないと」ということになりましょう。タイの王室財産管理局は、これまでその膨大な財産を「権威的に配分」することで、国家の近代化や開発を大胆に進めてきました。土地財産も豊富で、バンコク市内の同管理局所有地には、最先端の商業コンプレックスのみならず、スラムも多いと聞きます。在バンコク日本大使館の土地も同管理局所有のものです。すでに歴史に残る名君として誉れ高いプミポン国王ですが、いまや王族の中で世界一といわれるその富をいかに「権威的に配分」し、国を富ませることができるか、その手腕に期待したいものです。
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