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2008-08-18 00:00
北朝鮮に関する日中韓の思惑の相違
武貞秀士
防衛省防衛研究所統括研究官
ここ数年、日中韓の専門家会議で「日本、中国、韓国がどう対話を進めるか」について話し合う機会が多くなった。環境保護、食の安全、金融危機対策、災害時の救難救助から、領土問題、北朝鮮問題まで、いろいとなテーマを議論することが増えている。なかでも、北朝鮮問題は、必ず取り上げられるテーマである。3カ国の間では「北朝鮮の核問題をどう見るか」「北朝鮮にどう関与するか」「北朝鮮の体制はどうなるか」について専門家で意見はまちまちであり、日中韓それぞれの国益を踏まえた議論がでてくるので、議論するテーマにふさわしいのかもしれない。各国の本音とは何か。
公式見解にあるように、中国は朝鮮半島の非核化を望んでいるが、それよりも大事なのは、朝鮮半島で再び戦争が起きないことだ。しかし、非核化と戦争回避の2つが同時には成立しないシナリオがありうる。非核化のために圧力を強化すれば、金正日体制が急激な崩壊に向かい、朝鮮半島で紛争が起きるかもしれない。それを中国は避けたい。朝鮮半島での軍事衝突は避けたいので、金正日体制の崩壊を阻止したいという目標は、中国の政策優先順位では、北朝鮮の非核化よりも上である。90年代以降の中国の朝鮮半島政策は、その点で一貫している。中国にとり6か国協議は、その政策を維持するための手段なのである。
米国はライス国務長官が言うように、時間をかけて北朝鮮の核問題を解決する考えだ。「すべての核の完全かつ後戻りできない形での解体」を、期限を設定して追及することは止めた。これに対して、韓国には、南北朝鮮の関係改善が先行しないことへの不満がある。北朝鮮核問題解決のプロセスで米国が主役であることを認めるが、6月のような米朝協議の急進展に対しては、韓国は複雑な受け止め方をしている。核申告、冷却塔爆破、テロ支援国家リストからの北朝鮮の国名の削除通告、核の検証に関する北朝鮮への要求など、一挙に米国主導で事態が進んだ。韓国は南北間の交流が中断しているとき、米朝関係が進むことには賛成しない。韓国は同じ民族である北朝鮮と交流を進める過程で、北朝鮮が核を放棄してくれればと願っている。また、北朝鮮の政策に変化が起きるとき、中国、日本、欧米の影響力が北朝鮮に対して増大することには、韓国は賛成しない。
日本については、「日本の役割が見えない」と、どの国際会議でも不評である。しかし、日本は、中国、米国、韓国の意図を知り、役割の分担を尊重しながら、6か国協議に出席し、その作業部会のひとつである日朝協議のなかで、拉致問題解決に期待をしてきた。核問題では北朝鮮による厳密な核申告と検証への同意を期待する。日本は、核とミサイルと拉致の3つの問題の同時解決を追求してきたのであり、日本の政策にはブレはない。北朝鮮の強気姿勢が目立ち、日朝関係が関係改善に向けて大きく前進しないのは、北朝鮮が「米朝協議を続けていれば、核抑止力保有という看板を下ろさなくとも、米朝国交、その先に日朝国交の道が開ける」と楽観しているからである。「6か国協議が停滞するのは、日本のせいだ」という韓国の専門家に対して、最近の会議で私はそう説明した。
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