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2008-08-04 00:00
中央ユーラシア指導者アカデミーに参加して
入山映
・サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
ユニークな研修プログラムに再度参加する機会があったので、報告してその経験を読者と共有したいと思う。プログラムそのものの紹介というよりは、その含意とか、日本の市民社会に欠けているものの認識、といった側面をぜひ紹介したい、ということだ。従って、何回かに分けて、断続的になるかもしれないが、書いてゆく、ということになりそうである。そのことを予めお断りしておく。プログラムというのは、CELA(Central Eurasia Leadership Academy:中央ユーラシア指導者アカデミー)で、今年で7年目になる。中央アジア・コーカサス9カ国(アフガニスタン・アゼルバイジャン・アルメニア・グルジア・カザフスタン・キルギスタン・タジキスタン・トルクメニスタン・ウズベキスタン)の官庁・企業・非営利組織から4〜6名のミッド・キャリアの男女(原則男女同数)を選抜し、ほぼ二週間の英語によるリーダーシップ研修合宿を行うというもの。
それだけ聞けばどこにでもありそうなプログラムに聞こえるが、実は3つほど「工夫」がしてある。一つは言うまでもなく、参加対象国が旧ソ連構成国で、かつ程度の違いこそあれ、民主的と言うにはほど遠い政権のもとに現在はあるが、いづれかの時点で「民主化」が期待されること。その時に備えて民主的ガバナンス(統治)の要諦を身につけておこう、とする。つまり、押し売りの民主化アドボカシーではなく、技法の教習と言う目的意識がはっきりしていること。
二つ目は先にも触れたように、3つのセクターから注意深く、男女バランスに配慮して人選をすること。人選には、各国言語を流暢に話すウズベキスタン在住のアメリカ人がプログラム・ディレクター(ちなみに、夫人はウズベク人)としてあたり、3ヶ月をかけて9カ国を回って面接・人選を行う。応募はネットによっているが、倍率は国によって異なるものの5倍から8倍とのこと。
三つ目は、これが日米両国の民間イニシアティブによって設立されたこと。これら9つの国々の置かれた現状を見ると、これは絶妙の組み合わせである。というのも、これらの国々では「彼、彼女」(今後は便宜上「彼」と略する)らの共通言語がロシア語であることが象徴しているように、(ちなみに彼らは母国語の他にロシア語を話し、その上に英語でのセミナーに参加している。語学の才能には舌を巻く)、社会・経済的に目下のところロシアを無視してはなにも出来ない。それは百も承知している。しかし、べったり依存という精神構造からは「及ばずながら」脱却していたい。
かといって、欧米、特に米国依存は近隣諸国でのその振る舞いを見ていると、これもご遠慮申し上げたい。ヨーロッパは、そのイスラムに対する態度一つを見ても(ちなみにこの9カ国は、グルジアとアルメニアを除いて全てイスラム国である)、経済以外の関係の深まりは期待薄である。そこに日本が入れば格好の「毒消し」になる。ちなみにEUはこれも類似の発想からだろう、英国で1ヶ月の研修プログラムを若干異なった対象国を相手に行っている。この地域のミッド・キャリアを対象にした研修プログラムはこの2つだけ。かつてインドシナ半島諸国であらゆるドナーが競って研修プログラムを乱立させ、政府当事者が「派遣するヒトが足りない」と悲鳴を挙げていたのと好対照である。
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