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2008-07-28 00:00
重要性を増す自衛隊の任務を考える
佐藤考一
桜美林大学教授
去る6月24日に、海上自衛隊の護衛艦(さざなみ:4650トン)が、中国南海艦隊の司令部が置かれている湛江を初めて友好訪問し、昨年11月の人民解放軍海軍のミサイル駆逐艦(深セン:6100トン)の日本訪問に応えた。「さざなみ」の乗組員たちは、毛布300枚や非常食2600食などの四川大地震への支援物資も持参し、中国側の歓迎を受けた。抗日戦争の記憶が強い中国との防衛交流は、現在の日本に中国に対する敵意がないことを理解してもらうためにも、非常に重要である。防衛トップの会談も大事だが、現場の兵員多数が交流する意義はさらに大きいというべきである。ちなみに、人民解放軍の広報紙『解放軍報』の英語サイトを覗くと、Military Exchanges という項目がある。中国側も軍事交流は重視し出しているのである。摩擦が多く、靖国問題などの首脳間の見解の不一致で交流が簡単に途絶える、難しい相手であるだけに、一層こうした面での努力が必要であろう。自衛隊にとっては、PKOなどの国際貢献に続いて、国際軍事交流という任務の重要性が浮上しているといえる。
だが、その一方で、我々国民は自衛隊のことをどれだけ知っているのだろうか。確かに、元次官の汚職や、漁船との衝突事故などで、防衛省や自衛隊はこのところ不祥事が続いた。これらの問題への厳正な対処は必要だし、事件の責任は重く受け止めて欲しい。だが、国民の間から自衛隊の本来任務を無視した自衛隊不要論が出てくるとすれば、それは問題である。当たり前の話であるが、自衛隊の本来任務は国民の生命財産と領土・領海・領空の保全である。最近の例を挙げれば、調布市の工事現場で見つかった戦時中の不発弾(米国製1トン爆弾)の撤去作業は、5月18日に陸上自衛隊不発弾処理隊の手で無事終了したが、統合幕僚監部の発表では、平成18(2006)年度に陸上自衛隊・海上自衛隊が処理した不発弾や機雷などの爆発物の総数は9万6865個、沖縄などの離島での急患輸送のためのヘリコプターの出動は579件、災害救助のための派遣は24回に上っている。
不発弾や機雷の処理が必要なことは、日本の戦後がまだ終わっていないことの象徴であるが、多くの自衛隊員たちが、殉職者まで出しながら、ほとんど毎日国民の安全を守るために黙々と働き続けていることを忘れてはいけない。また、もうひとつ我々が忘れてはならないのは、自衛隊の出動は文民統制の原則に則って、政府の命令や地方自治体の首長の要請がないと出来ない上、文書で定められた任務以外は、現場で住民などから直接要請されても、対応できないということがある。軍国主義への反省が、自衛隊の手を縛っているのである。自衛隊を活用したいなら、文民統制の原則は変えないままでよいとして、その細部の見直しは必要になるということである。平成7(1995)年3月の地下鉄サリン事件の時のように自衛隊員の身分を一時的に警察に移して出動させるような、場当たり的な対応はやめるべきだ。自衛隊は、これからも国民に忠実で、国民を守る楯であって欲しい。だが、同時に我々もその任務の重みを認識し、効率的な運用を考えるべきなのである。
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