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2008-07-22 00:00
北東アジアの新しい戦略構造
武貞秀士
防衛省防衛研究所統括研究官
昨年初めから米朝協議が進展したあと、今年6月になって北朝鮮が核申告を提出し、核合意のプロセスが再び動き出した。6月の北朝鮮の核申告では、課題が残った。ウラン濃縮計画については触れていないし、シリアやイランとの協力関係の有無についても、沈黙したままだ。核兵器自体の申告もしていない。そもそも、「核抑止力を持つにいたった」と宣言した北朝鮮が、核抑止力を放棄するという新たな戦略を示していないのに、核放棄への糸口が見つかったと見ることができるだろうか。北朝鮮が強気であるのは、世界的な資源高騰で北朝鮮の地下資源が売れ始めたことがある。中国は北朝鮮の資源への投資で先行し、欧米の投資会社もまた北朝鮮の資源に食指を動かしている。これらが、北朝鮮経済へのカンフル剤になっている。いま、北朝鮮は建国60年行事に忙しく、平壌は活気を呈しているという話さえ伝わってくる。
米政府は、北朝鮮の核申告を受けて、米議会にテロ支援国家指定解除の通告をし、また北朝鮮の冷却塔爆破を支援した。今後のプロセスでも米国の指導力は大事だが、米政府の姿勢には「北朝鮮の核問題は、時間をかけて、米国主導で対処する」という方針が見えてきた。中国は、6か国協議の開催で役割復活を図るが、6か国協議の結果を踏まえて核申告を検証するという段階になると、米国主導になることを知っているので、核申告の検証プロセスには、あまり積極的ではない。
日本は日朝協議の進展に期待をかけるが、北朝鮮が拉致問題解決に消極的なのは、米朝関係進展に「自信」があるからである。日本は「拉致問題が前進したら、支援を検討する」という姿勢を堅持し、拉致、核、ミサイルの3つを並行して解決する方針である。そのとき、日韓関係は良好でありたいが、政権発足5か月で支持率が4分の1になった李明博政権の対日姿勢は、半年前のそれとは少し違ってきている。李明博政権が掲げる「先進国入りのための実用主義」の真意は、「米国と仲良くすれば、日本、中国は怖くない」(大統領選挙前日の李明博氏の演説から)ということなのかもしれない。
米朝関係が進展する中で、北朝鮮の巧みな交渉術と耐久力が目立ち、中国と米国の戦略的友好関係が浮上し、米韓同盟を修復しながら、南北関係改善を模索する韓国の置かれた複雑な立場が見えてきた(以上の見解は、すべて執筆者個人の見解である)。
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