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2008-07-15 00:00
消費者パワーに期待する日本の制度改革
武石礼司
東京国際大学教授
東アジア地域は、経済関係をいっそう緊密化させており、相互依存をますます強めている。こうした状況下で、では、日本国内においては、どのような取り組みが必要となるかを考えておく必要がある。現在は、IT利用の高度化・深化をはじめとてして、日々変化が生じる環境があり、それに合わせて国内の制度を常に見直し、既存制度に対する変革を迫り続ける必要がある。例えば、洞爺湖サミットで2050年までに温室効果ガスの排出量を世界全体で半減させるとの目標共有があったことに象徴されるように、既存制度が今後大きく変わらざるを得ない状況が生じている。ところが、新規参入が難しくなっている業種が存在するという意味から言っても、国内の少なからざる分野に既得権益が存在していることは間違いない。
こうした分野として、例えば放送、通信、港湾、電力、金融等をあげることができる。変化の激しい時代にあっては、むしろ制度がどんどん変わっているほうが普通となり、新規参入が相次いで、既存のビジネス・モデルを崩していくことが期待される。筆者はかつて、電力供給が危機に瀕したカリフォルニアを、危機発生の直後に訪問したことがあるが、そこでの会議に出ると、多くのベンチャー企業が出席していて、例えばある事業者は、自社が製品化した電力消費量を確認できるメーターを、電力会社/公社が、各戸にただで配布すれば電力消費量が抑えられて、危機対応が可能となると述べていた。このように、危機の発生をチャンスととらえるベンチャー企業が多数発表を行っていたのが印象的であった。危機にあってもそれへの対応を可能とし、変革の起点とできる米国の底力を感じた。
一方、日本に関してみると、既存の制度を変えるよう圧力をかける勢力が、明らかに不足している。政党が政権維持を存立の目的としてしまうと、どうしてもコンセンサス重視となり、既存勢力に迎合的な政策しか採用できなくなる。また産業界においても、国内市場がほどほどに大きいため、そこでのシェアが維持できていれば居心地が良く、革新的なベンチャー企業の育成が遅れてしまう。こうした場合、世界的に進む大きな変化に追随することを積極的に求め、変革を要請する勢力として期待されるのは「消費者」である。自分が納得したものしか買わず、製造者の顔が見えることを求める賢い消費者は、世界中で良いもの・良いシステムがあるかを探しており、国内市場だけでなく、世界の市場を見ているからである。
消費者がより発言力を強め、的確な政治選択を政府に迫るようにするためには、例えば、政府支出の費用対効果がわかるよう、数値公表の徹底が必要となる。また、放送と通信分野の融合による新規参入の促進、それによる発信者と受信者の双方向のやり取りの確保、さらに発信者側のレベルの向上による質の高い情報の提供も極めて効果的である。日本の側における不断の制度改革が必要となっており、そのための政治圧力をかけることができる「消費者」のパワーに期待することが、アジア全体の相互交流の質の向上とアジアのさらなる発展に貢献するとの認識が必要である。
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