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2008-07-07 00:00
悪ガキ金正日に振り回されないために
入山映
サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
「拉致被害者が現在どうなっているか、どこにいるかを北朝鮮は全て知っている。それをいまさら再調査だなどというのは茶番に過ぎない。こんな茶番に日本政府が付き合っても、よいことは何もない」、これは7月3日外国特派員協会で開かれた“Is The Dear Leader's Nuke Report For Real? Implications For Japan And The U.S.-Japan Alliance”(親愛なる指導者殿の核報告はホンモノか?日本と日米同盟に持つ意味)と題する記者会見における、重村智計早稲田大学教授の発言である。この会見には、他に伊豆見肇静岡大教授、衛藤征士郎衆議院議員も出席して、Q&Aを含めて約2時間のやりとりがあった。この稿ではその詳細を報告するのではなく、重村教授の発言を中心に問題点の概要を紹介しておきたい。
重村教授によれば、「およそ同盟が機能するためには、敵ならびに価値観についての共通の認識が必要だ。今回の米国の対応は、両国間の価値観共有について深刻な疑念を抱かせるものであり、同盟にとって大きな影響がある」、「北朝鮮が今回、かくも少ない戦利品しかないにもかかわらず言質を与えたのは、六カ国協議の枠組みから取り残されることを怖れたと見るべきだろう。枠組みから外れても喪うもののない日本は、拉致問題解決を前提条件にするべきだ」、「北朝鮮が今回の動きに出た理由は、深刻な外貨不足によるものであり、当面の目標は渤海湾の石油利権をペトロチャイナに売り渡すことによる35億ドルの外貨収入だと思われる」、「従ってテロ国家の指定を外しても、外貨取引を引き続き制限することにより、その実効をなくする可能性は依然存在する」、しかし「金融制裁についてはヒル次官補が既に北朝鮮に密約を与えている可能性がある」とのことであった。
「北朝鮮には、中国の反対を押し切って再度核実験を行う可能性はない」、「北朝鮮は現在事実上集団指導体制下にあると思われる」、「その中で核を取るか、米国との関係を取るかの対立がある」という。筆者は、重村教授の分析が正しいか否かを判断する材料を持ち合わせていないが、今回の事態の推移にいたずらに一喜一憂するのではなく、北朝鮮の弱点を見据えて、日本としての対応を考えるべきだ、という主張には全く同感である。先に6月26日付けの本「百家争鳴」欄への投稿(603号)でも触れたように、ここと思えばまたあちら、のような悪ガキの対応に、右往左往することこそ向こうの思うツボだし、二国間交渉で取るものを取る、という思惑の実現を阻むことこそが、最も重要な外交上の選択だと考える。
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