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2008-06-14 00:00
台湾の政権交代と問われる「親台派」日本人の対応
大江志伸
江戸川大学教授・読売新聞論説委員会特約嘱託
対中融和路線を掲げる台湾の馬英九政権が5月20日、発足した。筆者は今年1月下旬の本欄への寄稿「台南の歴史に何を学ぶべきか」で、馬英九氏の総統選勝利を念頭に、「日本人は台湾について語る時『親日か反日か』の二元論で論じがちだが、複眼的な視点が必要だ」と力説した。新政権誕生で、二元論的な台湾観は変わると予測していたが、報道を見る限り、そうでもなさそうだ。とくに心に引っかかったのが、台湾報道では一日の長がある産経新聞の記事である。
同紙5月23日付「日台早くもギクシャク?」の記事によれば、総統就任式典当日の「ささいな発言や態度」がきっかけで日台間に「つまずき」が生じたという。いきさつはこうだ。20日午後、総統府で開かれた昼食会で、日華議員懇談会の平沼赳夫会長は、馬英九氏が就任演説で日本に言及しなかったことに「4年後の演説に『日本』と入れていただけるよう努力したい」と遠まわしに注文を付けた。これに対し、馬総統は翌日の記者会見で「すべての国名を挙げることはできない。日本の代表団とは昼食をとり、日台関係の重要性を強調した」と自ら“反論”したという。
産経新聞の記事は、今回の「つまずき」の背景には、馬総統の「親中、反日」イメージへの懸念をぬぐえない日本側に対する、台湾側のいらだちがあると指摘する。そのとおりだろう。第一に公式の宴席で、自国の名前をあげなかったからと注文を付けること自体、尋常とはいえない。第二に、馬総統および政権党に返り咲いた国民党は、日本重視の姿勢を繰り返し強調してきた。就任演説では「日本」の国名こそ挙げなかったが、式典会場の巨大スクリーンに映し出されたのは、英語と日本語の翻訳だけだった。これとて、台湾側にすれば最大限の誠意表明だったといえる。
折も折、日本が実効支配し、中台も領有権を主張する尖閣諸島・魚釣島近くの日本領海内で6月10日未明、警備中の日本の巡視船と台湾の遊漁船が接触し、遊漁船が沈没する事故が起きた。遊漁船の乗員12人は巡視船に救助されたが、台湾総統府は日本に厳重に抗議するとともに、船長の即時帰還と損害賠償を求める声明を発表した。今回の事故は、親日路線を鮮明にしてきた陳水扁前政権の退場という日台関係の「曲がり角」で起きた。しかも10年近く中断していた窓口機関による中台対話の再開と重なったのも象徴的だ。「曲がり角」をスムーズに回るには、日本側とりわけ「親台派」とされてきた人々の戦略的な発想転換が必要なのである。
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