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2008-05-29 00:00
(連載)胡錦濤政権の対日姿勢を考える(2)
佐藤考一
桜美林大学教授
しかし、いい話ばかりではない。胡錦濤主席訪日の際、共同声明で使われた「戦略的互恵関係」という言葉にそれが表れている。青山学院大学の高木誠一郎教授は、『国際問題』誌2008年3月号で、「戦略的互恵関係」は「戦略的パートナーシップ」と同じ意味ではないと指摘した。日中共同声明を見てみると、日本語の「戦略的互恵関係」は中国語でも「戦略互恵関係」とほぼ同じ表現になっている。だが、漢字よりストレートに意味を伝える英語では、"Mutually Beneficial Relationship Based on Common Strategic Interests"(共通の戦略的利益に基づいた互恵関係)となっており、戦略的利益に基づいて互恵関係を築くのだという感覚が伝わってくる。「パートナーシップ」よりも弱いニュアンスであり、日本に対する警戒感がのぞいているようにも見える。
この問題の背景には、胡錦濤氏の政治家としての「生い立ち」が絡んでいるように思われる。胡錦濤氏は、1980年代に胡耀邦総書記の部下として、中曾根康弘政権時代の日本との青年交流に尽力した人物である。だが、中曾根総理の靖国神社参拝を契機に、中国共産党内に権力闘争が起こり、中曾根氏と親しかった胡耀邦総書記は、「自由化の錯誤」を理由に理不尽な批判を受け、1986年に失脚させられた。胡錦濤氏は、当時胡総書記の秘書だった鄭必堅氏(後の共産党中央党校副校長)に、「処分があまりにも不公平だ」と不満を漏らしたという。胡錦濤氏の、今までの対日姿勢を見る限り、江沢民前国家主席のような、反日感情の強い指導者ではないようである。だが、中国国内では、対日接近を口実に権力闘争を挑まれることのないよう、胡耀邦の二の舞を演じないよう、慎重に行動するであろう。
チベットや新疆の少数民族の扱いだけでなく、それぞれ1億人はいるのではないかといわれる失業者と農民工(不正規労働者)の問題、官僚の汚職、都市部の住宅問題等、中国政府が抱える難問は多い。「龍の季節」はこれからも続くだろうが、北京オリンピックのような明るい話題ばかりではない。国内の動揺を抑えることを第一とする胡錦濤政権の対日姿勢は、現在小康状態であるが、これからもそれが続くかどうかはわからない。これからの中国の対日姿勢をどう読み、相手を挑発しないように、また日本政府としての「国益」を損なわないように、東アジア協力の枠組みとも連動する対中政策をどう進めるか、福田総理の手腕が問われている。(おわり)
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