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2008-05-14 00:00
「アジアの現実」は日清・日露戦争前夜と同じか
田中秀和
大学院生
拓殖大学学長の渡辺利夫先生が、現在、日本経済新聞朝刊の「やさしい経済学」欄に「新・海洋国家論」を連載しておられます。渡辺先生は言わずと知れた我が国を代表するアジア経済の専門家であり、私も日頃教えられることが多く、大変尊敬申し上げている先達です。今回もまた興味深く拝読しているのですが、その中で「現在の極東アジア地政学は日清・日露戦争の開戦前夜を再現したかのごとくである」と指摘する下りに直面して、「うっ」と唸ってしまいました。本当にそう言えるのでしょうか。私は大いに疑問なのです。
たしかに極東アジアには、さまざまな不安定要因が存在しており、その解決の筋道は依然として不透明です。北朝鮮の核開発問題、中国の軍事力増強、台湾海峡問題、中国や韓国の一部における反日運動などを思い浮かべれば、今後の極東アジア情勢の展望において、決して安心することは許されず、日本としてこれらの困難な諸問題にどのように対処してゆけばよいか、熟慮された戦略を持たなければならないのは言うまでもありません。
しかしながら、そうした今日の極東アジアにあっても、国家間に問題があるからといって、ただちに軍事力を行使してそれを解決しようとしたり、戦争という手段を通じて自国の権益の拡大を図るという状況にはありません。軍事力の現実的行使が合法かつ可能であった時代に、一触即発のなかで外交を進めざるを得なかった日清・日露戦争前夜とは、かなり異なった状況にあるのではないでしょうか。渡辺先生は「改めて国家戦略を練り上げる好機が現在なのではないか」と仰っていますが、誤った状況認識から出発して戦略を論じても、そうした戦略が日本にとって望ましいものであるとは限りません。今こそ、極論に走るのではなく、「アジアの現実」を冷静に見ることが必要ではないでしょうか。
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