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2008-05-09 00:00
評価すべき日中首脳会談
井上和洋
予備校教師
中国の胡錦濤国家主席が国家主席としては10年振りに日本を訪問しています。7日には福田首相との間で、「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する「日中共同声明」が署名されました。これは、1972年の「日中共同声明」から数えて4番目の共同声明であり、日中関係を未来志向で発展させていく上で、歴史的に重要な声明として評価できると思います。
しかし、マスコミの報道やインターネットのブログなどを見ていると、必ずしも高い評価が得られていないようです。福田総理のお膝元の自民党の中でも、特に保守系議員からは、不満の声が出ているそうです。また、口の悪い論者は、「最大の成果はパンダだけ」といった批判まで行っています。
もちろん最近の日中関係は、数年前に比べて改善してきたとは言え、依然として多くの困難な問題が横たわっています。今回の首脳会談でも、東シナ海ガス田、毒入り餃子、チベット問題など、日中間の懸案問題について、あまり目を見張るような成果が出ていないのも事実です。そして、これらの問題について、日本として主張すべきことはきちんと主張しなければならないというのも、言うまでもなくその通りだと思います。
とは言え、困難な問題であればあるほど、容易に結論に達することができないのが現実の世界であり、ましてや威勢のよい主張を声高に叫ぶだけで、それを解決できることなどありはしないと思います。感情的な唯我独尊に走ることを戒めつつ、熟慮された理性的な対話を通じて、地道に解決を目指していくという姿勢が、必要ではないでしょうか。これは日中双方に言えることだと思います。
今回の日中首脳会談は、それ自体として必ずしも十分なものではなかったかもしれませんが、これで日中関係のすべてが決まるのではなく、今後も紆余曲折を経ながら未来を切り拓いていかなければならないわけですから、信頼醸成の素地を着実に形成しているという意味において、将来への一つの大きなステップとして評価できるのではないでしょうか。
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