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2008-04-11 00:00
地域共同体における人の自由移動実現の難易度
石垣泰司
東海大学法科大学院講師
欧州でも、東アジアでも、国境を越えた人の自由移動が可能であることが望ましいことはいうまでもない。 欧州、とくに欧州連合(EU)では、域内における人の自由移動は、関税障壁なき単一市場の実現と並んで、共同体の最重要な基本目標の1つとされ、労働者の自由移動をはじめ、加盟国国民の域内自由移動が比較的早期に達成された。しかし、域内に入った第三国外国人をも含む人の完全な自由移動は、当初加盟国間でも異論があったため、共同体とは別個の枠組みとして、1985年フランス、ドイツ、ベネルックス3国の5カ国のみの合意によるシェンゲン協定の形で実施されたが、その後同協定への加入国が逐次増加したことにより、EU自体の制度に統合、一体化された。とはいえ、英国、アイルランドは、依然としてシェンゲン体制への不参加(オプトアウト)が認められているので、EUの同じ域内とはいえ、外国人は、両国に旅行するときは、入国に際し改めて旅券審査を受けなければならず、自由な移動はまだ出来ていない。
EUの加盟国は、2004年15カ国から一挙に25カ国に増加し、その後さらに2カ国が加入し、現在27カ国体制となっている。新たにEUに加盟する国は、シェンゲン協定を受け入れることを義務づけられているが、域内の外国人を含む人の自由移動は即時に実施しなくてもよい、との経過的措置が認められていたため、多数の新加盟国との間では依然国境審査は維持されてきた。それが、最近の報道によれば、2007年12月21日よりエストニア、チェコ、リトアニア、ハンガリー、ラトビア、マルタ、ポーランド、スロバキアおよびスロベニアがついにシェンゲン圏に加わり、これらの諸国と以前からのシェンゲン協定参加国であった15カ国との間の空路上の国境での出入国審査は、本年3月30日より廃止され、シェンゲン圏の拡大は完了した。欧州委員会のジャック・バロ副委員長は、これら諸国間の「空港での国境審査の廃止は、歴史的な偉業の完成にいたる最終段階であり、これにより、欧州内の24 カ国間に国境がなくなった」と述べたという。
一方、東アジア地域における人の国際移動の現状はどうなっているであろうか。東アジアにおいては、もとより欧州におけるシェンゲン協定のような特別の取り極めはなく、人の移動は各国政府の個別的出入国政策に完全に委ねられている。各国とも一部の国の観光客やビジネスマンについては査証免除等の特別措置を講じているが、旅券審査まで免除している国はどこもない。日本からの観光客等短期滞在者には、米国や欧州諸国は査証を免除しているが、豪州は日本を含むどの国の入国者に対しても査証取得を義務づける政策をとっており、近年になってやっと日本人観光客等には査証を取りやすくする便宜的措置を講じているだけである。従って、将来、東アジア共同体構築に向けての取り組みが具体化する場合においても、域内における人の自由移動は、最も困難な課題の一つであり、10億を超える人口を有する国との間の人の自由移動は、まず不可能であることだけは確かであろう。
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