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2008-04-07 00:00
(連載)持続可能なアジアのための環境人材育成(4)
廣野良吉
成蹊大学名誉教授
4月6日付け本欄への拙稿(539号)で、アジア地域における環境的持続性への脅威に限定して、その実体と今後の予測について、水資源と天然資源保全問題の2項目を検証したが、第三項目として、人間の日常生活に安らぎと潤いを与えてくれる森林保全問題がある。世界的に見ると、森林破壊が急速に進展しており、世界食糧農業機構(FAO)の「世界森林報告2005年」によれば、1990年に39億63百万ヘクタールあった森林面積は、2000年までに94百万ヘクタール減少しており、この最大の減少は南アメリカとサハラ砂漠以南のアフリカ地域に見られたと報告されている。特に熱帯地域の天然林面積の減少が激しく、その規模は1億42百万ヘクタールに達している。たった10年間に、総面積37.8百万ヘクタールの日本が4つ消失したことになる。
アジアでも同期間に森林面積は5億51百万ヘクタールから5億47百万ヘクタールへと、毎年0.1%ずつ減少しており、1990年代の10年間だけで日本の森林面積約25百万ヘクタールの6分の1、すなわち九州と四国と中国地方全域がアジアの森林から消失したことになる。森林破壊が過放牧と並んで主要な要因である土壌劣化も、アジア地域では急速に進展しており、国土に占める土壌劣化面積の割合に関するFAO統計によれば、タイの40%を初めとして、アフガニスタン、スリランカ、北朝鮮、中国、パキスタンでは30%を越え、韓国、インド、バングラデッシュ、フィリピン、インドネシアでは20%を超える高さにあることは注目に値する。ちなみに、わが国では僅かに1.4%と記録されている。
第四項目は、グローバル競争下の世界経済において不断の技術革新に基づく産業構造の変化と、生活の便利さを求める人間の生活様式から現在生まれ、将来益々深刻化していく有害廃棄物の問題である。ある研究によれば、世界全体での廃棄物の発生量は2000-2050年の期間に、127億トンから270億トンへ増加すると予測されている。国連アジア太平洋経済社会委員会の「アジア太平洋地域環境白書2005年」によれば、1990年には世界全体のたった8%を占めていたアジアの製造業は、2004年には18%を占めており、中でも事務機、コンピューター、ラジオ、テレビ等電気機器、鉄鋼、金属、非金属鉱物製品、輸送機器、化学、石油・ゴム・プラステイック製品、セメント、食品産業の生産の伸びは著しく、これらはいずれも生産工程での環境汚染度、有害廃棄物産出度が高い産業である。特に、重金属、水質汚染物質、浮遊粒子状物質、二酸化硫黄等有害化合物を初めとする有害廃棄物の発生量が大きい。1993-2010年の期間には、中国では5千万トンから2億5千万トンへ、インドでも39百万トンから1億56百万トンへ、インドネシアでさえ5百万トンから23百万トンへと増大することが予測されている。
アジア諸国では、産業廃棄物の処理施設能力の欠如から、建設廃棄物、プラステイック・金属クズを初めとする産業廃棄物の国内不法投棄問題が年々深刻化しつつあるが、バーゼル条約による有害廃棄物の海外移動の禁止にも拘らず、海外輸出入量も増加していることが大きな懸念材料である。もちろん、産業廃棄物の輸出・輸入量の全てが有害廃棄物ではないが、前述の国連データによれば、2000年現在、アジア地域で最大の輸出国はグルジアであり、マレーシア、インドネシア、韓国、ニュージーランドと続いている。最大輸入国も同じくグルジアであるが、その後にはオーストラリア、シンガポール、マレーシア、中国が続いている。(つづく)
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