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2008-04-06 00:00
(連載)持続可能なアジアのための環境人材育成(3)
廣野良吉
成蹊大学名誉教授
4月5日付け本欄への拙稿(538号)では、アジア地域の経済的・社会的・環境的持続性への第一番目の脅威として、経済的ガバナンス体制の改革・強化に失敗した場合の経済危機について触れた。第二番目のアジア地域の社会的持続性への脅威の度合いは、アフリカ地域やラテン・アメリカ地域に対比すると、その農村社会における支配的な社会構造からかなり低いと想定されるが、それでも、アジア諸国で現在進行中の急速な都市化現象、公共投資の大・中都市への集中、それに伴う地域間格差や貧富格差の増大、国民の政治への不信の増大などを見ると、社会的持続性への脅威を増幅する悪循環シナリオを描くことも、あながち非現実的ではない。
第三番目の脅威は、現在既に発生している多種多様な環境破壊の増幅である。特に資源多消費型の高度経済成長に伴う地下資源の急速な枯渇、森林資源の希少化と自然環境の破壊、工業化に伴う大気・土壌の汚染、水質の汚濁、都市化に伴う都市居住環境の悪化は、年々深刻度を増しつつある。これらの環境破壊に国境はなく、アジア地域の環境破壊は、世界の環境破壊に拍車をかけているといってよい。以下、アジア地域における環境的持続性への脅威に限定して、その実体と今後の予測について考えてみよう。
まず第一に、人間の日常生活の基本である水資源保全問題である。わが国の国土交通省が発表している「日本の水資源、平成16年度版」によれば、水資源使用量は、1995年から2025年の30年間に、世界全体では、生活用水で3,540億立米から6,450億立米へと1.8倍の増加が、特にアジア地域では、1,600億立米から3,430億立米へと2.1倍の伸びが予想されている。工業用水については、同期間における世界全体の7,140億立米から11,050億立米へと1.5倍の増加に対して、アジアでは、2.2倍増が予測されており、さらに、農業用水では、世界全体の25,040億立米から31,620億立米へと1.3倍増に対して、アジアでは17,410億立米から22,450億立米へと、同じく1.3倍増が予測されている。工業化、都市人口の飛躍的拡大に伴って水質汚濁も、アジア地域のいたるところで進行しており、BOD(生物化学的酸素要求量)で見ると、キリギス、アゼルバイジャン、バングラデッシュ、ネパール、スリランカ、カンボジア、インド、中国、ベトナム等の河川の汚染は顕著である。
第二は、天然資源枯渇の問題である。現在1ヶ月間に世界全体で採掘されている鉱物資源量は、産業革命までに世界が使用した総量を遥かに超えており、「世界金属統計2001」によれば、金、銀、石油、鉛、銅、亜鉛といった鉱物資源については、残余年数は30~50年と予測されている。天然ガス、ウラン、モリブデン、タングステン等の鉱物資源も、現在の採掘可能条件の下では、今世紀末には消失していると予測されている。もちろん、石油採掘の歴史に見るように、原油価格の上昇と技術革新の進展に伴い、海底油田の採掘等、従来経済的採算に合わない石油資源の採掘が将来経済的に可能になることが考えられるが、世界自然保護基金の試算によれば、世界の資源消費量は、既に地球の生産能力を上回っているといわれている。よく言われているように、世界のあらゆる途上国が、現在の先進諸国のライフスタイルをそのまま移入すれば、地球が2個以上必要となるかも知れない。(つづく)
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