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2008-04-05 00:00
(連載)持続可能なアジアのための環境人材育成(2)
廣野良吉
成蹊大学名誉教授
「持続可能なアジアに向けた大学における環境人材育成ビジョン検討会」報告書の構成は以下の通りであるが、今回は、特にアジア地域が現在から将来にかけて直面すると考えられる経済的・社会的・環境的持続性への脅威についての小生の若干の懸念について述べたい。
本報告書では、先ず第一に、アジアの急速な経済発展、人口増に伴って発生している環境悪化の現状について鳥瞰し、第二に、アジア地域における広範な環境リスクに対して、わが国をはじめとするアジア諸国ではいかなる対策を政府、地方自治体、企業、大学が採っているかを紹介している。第三に、アジア諸国における環境人材の育成の現状と課題に焦点をおいて議論し、環境人材に求められる3大要素、日本とアジアの途上国の大学における環境人材育成の現状を紹介したあと、大学での効果的な環境人材育成がどのように考えられるかを提案している。第四に、世界に通用する環境人材育成のためのアジアのイニシャティブ(ELIAS)を提案し、大学における取り組み、大学と企業・行政・NPO・国際機関等各主体の連携枠組みづくりや、環境人材の育成に向けた域内協力やより広範な国際協力のあり方について検討している。
では、まずアジア地域の経済的・社会的・環境的持続性への脅威について検証してみよう。アジア地域では、1970年代以降の急速な経済発展、工業化、都市化の進展の中で、経済面、社会面、環境面で、もろもろの持続性に対する脅威が散見されてきたのみならず、今後はその深刻化が予想される。第一に、アジア地域における経済的持続性への最大の脅威は、貿易・為替・資本の自由化を通じてグローバル化した世界経済の元で、国内の銀行・金融制度を始めとする経済的ガバナンス体制の改革・強化は必須であり、これに失敗するとタイの金融危機に始まった1997~98年のアジア経済危機の再来がありうるということである。
特に急速な経済成長で、経済規模が90年代に比べると飛躍的に拡大した現在のアジア諸国で、ガバナンス体制の不備による政治不安定や政治危機が発生すると、従来大半のアジア諸国で進めてきた外資導入による輸出指向型工業化に大きなブレーキがかかるだけでなく、世界経済に対する衝撃は一層大きい。さらに、急速な経済成長の元で、中産階級、地域格差、貧富の差が拡大した今日のアジア経済では、海外からの対内直接・間接投資の減少がもたらす経済成長の鈍化、失業増大と貧困層の悪化を伴う経済危機は、国民の政治不信と社会不安に連鎖する可能性が高く、アジア地域における社会的持続性への大きな脅威となる。(つづく)
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