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2008-04-04 00:00
(連載)持続可能なアジアのための環境人材育成(1)
廣野良吉
成蹊大学名誉教授
3月24日に東京都庭園美術館大ホールにおいて、環境省主催の「持続可能なアジアに向けた大学における環境人材育成ビジョン検討会」報告書の発表会が開催され、200名を超える参加者があった。基調講演、パネル討議に引き続いて熱心な討議が展開されたが、この問題に関する国民の関心が如何に大きいかを示していた。1960年代以来アジアでは、日本から始まった急速な経済成長・工業化は、やがて韓国、台湾、香港、シンガポールへと伝播し、1980年代からは世界経済のグロ-バル化の中でマレーシア、タイ、中国、ベトナム、フィリピンが加わり、やがて1990年代にはラオス、カンボジアも国内政治の安定化と共に、東アジアの奇跡に参加し始めた。しかし、アジア地域における急速な経済成長は、大気汚染、水質汚濁、土壌破壊等の自然環境の悪化のみならず、所得格差、地域間格差の拡大と都市化を誘発し、エネルギーを含めた天然資源の消費は激増し、世界の経済的・社会的・環境的持続性に多大な悪影響を与えてきた。
このような地域的かつグローバルな課題に適切に対応するために、近年アジア地域でも、国連のミレニアム宣言・開発目標(MDGs)に基づく貧困削減、基礎教育の普及、ジェンダー平等、所得格差の縮小が叫ばれ、長期的には低炭素社会、循環型社会、自然共生型社会の実現、さらには人間の尊厳を希求する人権擁護、民主的ガバナンス意識の向上と制度化による持続可能な社会づくりの必要性が強く認識されるようになった。特にアジアにおける持続可能な社会の構築には、現在のライフ・スタイルや経済社会システムを変革し、すべての政策において環境保全を内在化させていくことが必要不可欠となっている。
2002年ヨハネスブルグで開催された「持続可能な開発のための世界首脳会議」において、わが国の政府とNGOが共同提案した「持続可能な開発のための教育(ESD)の10年」は、2003年には国連総会で採択され、2005~2014年が「ESD国連10年」となった。 わが国はもちろんのこと、先進国、開発途上国すべてにおいて、現在「ESD」計画が進展し、来年がその中間レビュー年となっている。これは、すべての国々で経済政策、社会政策の立案・実施において環境保全を内在化するためには、あらゆる主体、あらゆる地域において人々のESD教育が不可欠である、という世界共通の認識からである。
特に、昨年6月に閣議決定された「21世紀環境立国戦略」や「イノベーション25」では、持続可能な社会の実現を担う環境に焦点を置いた人材育成の必要性、重要性が示された。また昨年11月に開催された東アジア首脳会議(EAS)や同年12月の日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM)等でも、アジアにおける環境人材の育成の必要性、そのためにアジア各国が協力していくことの重要性が合意された。これらを踏まえて、わが国では環境省の提唱で、昨年6月に「持続可能なアジアに向けた大学における環境人材育成ビジョン検討会」が設置された。検討会では、アジアの持続可能な発展の実現に向けた社会経済の変革を担う人材育成の考え方や方策を検討し、環境人材育成ビジョンをまとめた。なお、ビジョンのとりまとめに当たっては、現場の声を反映するため、国内外の大学、企業、NGO/NPO、行政等で持続可能な社会の実現に取り組む200名以上の方々や、全国の大学関係者に協力をいただいたことを、同検討会の座長としてこの場を借りて感謝したい。(つづく)
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