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2008-03-31 00:00
(連載)ERIAとCEACの相互補完関係発展を期待する(2)
池尾愛子
早稲田大学教授
ERIA東京フォーラムのセッション1「シームレスな世界最大ビジネス空間の創造に向けて」のパネリストは、ERIA関係研究者以外の人々で構成され、ERIAとの関連付けも特になされなかったが、パネリストたちの熱心さは伝わってきた。とくに、中国から参加した国務院発展研究センターの陳小洪(Chen Xiao Hong)企業研究所長の発表「中国企業の海外事業展開と東アジア経済統合への期待」は、グローバル・フォーラムの政策掲示板「議論百出」で2007年7月27日(334号)と同月28日(336号)に私が紹介した「走出去」戦略と重なるものであり、私の感想も重なることになる。2006年9月7日に前述の政策掲示板「議論百出」(108号)で私の注目した提案が、準備期間を経て正式のものになっていくのを見るのは嬉しい。
欧州連合(EU)の形成過程は、まず統合への強い政治的意思から始まったといってよい。それに対して、東アジアの場合、地域経済に関する共同研究の成果を通して共通認識の醸成と人材育成が行われ、域内の政策・制度の調整も緩やかに進んでいくように思われる。そのため、共同研究が経済統合に向けての不可欠の土台となるはずであり、その重要性はきわめて大きい。こうした状況を鑑みると、ERIAに入っていない国――例えば北朝鮮――が希望する場合には、ERIAにオブザーバー参加する途があってもよいと思う。地域全体の発展には、関係諸国の全てが共同して政策・制度の調整に積極的に取り組むことが望まれるからである。
なお、東アジアの地域統合について議論する場としては、ほかにもちろん当評議会(CEAC)があるが、この両者を比べてみた場合、(1)ERIAが政府ベースの取組みであるのに対して、CEACは民間ベースの取組みであり、(2)ERIAが「アジア版OECD」という国際機関の創設を目指すのに対して、CEACは日本国内における「オール・ジャパン」の知的プラットフォーラムであり、さらに(3)ERIAが経済分野を主たる研究対象とするのに対して、CEACは政治安全保障から経済・文化までを含む広範な分野を研究対象としており、(4)ERIAはそれ自体が一つのシンクタンク・ネットワークとなることを目指しているのに対して、CEACは東アジア・シンクタンク・ネットワーク(NEAT)という既存のシンクタンク・ネットワークの一部――しかし、中心的な一部――になっており、そして(5)ERIAが研究者集団であるのに対して、CEACは研究者だけでなく財界人や政治家や官僚なども加わった複合集団である、などの諸点で、両者の目的、性格、活動内容には大きな相違がある。
もともと東アジア地域統合という事業は、一つや二つの団体や組織の活動で達成できる事業ではなく、多数の行動主体の重層的な協力と補完の関係があって初めて達成できる大事業である。ERIAとCEACについても、その関係は、決してどちらか一方があればよいというものではなく、ともに補い合い、助け合って発展して行かねばならないものであると考える。(おわり)
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