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2008-03-25 00:00
(連載) 東アジア海上安全保障協力と日本の貢献(2)
佐藤考一
桜美林大学教授
前回投稿(本欄3月24日付け投稿524号拙稿)では、東アジアの海上安全保障協力のソフト面の成果について述べた。では、ハード面の成果はどうか。海上保安庁は、2000年からインド、マレーシア、シンガポール、インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン等の海上保安機関との合同訓練を開始し、インドネシア海上警察には小型巡視船3隻の贈与も決めた。海上保安庁とインドネシア海軍の法執行に限定した合同訓練も実施されており、こちらの協力も進めている。また、米国は、2007年10月に、拡散防止イニシアティブ(PSI)やならず者国家対策、さらにはテロリストから、海賊、麻薬、不法移民、さらには津波などの災害救助までの多様な問題への対応を進めるため、海軍・海兵隊・沿岸警備隊を連携させて動員する協調的戦略(Cooperative Strategy)を打出し、東アジアの同盟国、友好国にも参加を求めようとしている。
米国の計画は、伝統的安全保障から非伝統的安全保障までの広範な問題をカバーする体制を作ろうという壮大な試みであるが、様々な障害がある。例えば臨検について、海上保安庁等の海上保安機関が強制可能なのは自国の領海内のみであり、公海上では国連海洋法条約(日本は締約国、米国は2007年現在まで未批准)に従えば、海賊船や国籍不明の不審船等を除いて、その船の船籍国の許可がいる。沿岸国の領海だけでも、効果がないわけではない。だが、それを高めるには、17世紀のグロティウス以来の「海洋自由」の原則と、海上安全保障の取り合いについて、国際社会が合意を形成することが必要だ。また、日本のテロ対策特措法は、海上自衛隊による給油等の補給支援活動が中心で、戦闘行為が行われている海域では、それもできない。
武器の使用は生命又は身体の防護のため、やむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合にのみ認められるが、日本政府は憲法解釈上の問題から集団的自衛権を認めていない。このため、アフガニスタン沖等で同盟国や友好国の海軍艦艇が突発的な戦闘行為に巻き込まれた場合、その周辺海域に自衛隊の護衛艦がいても援護に向かうことは難しい。法文の解釈の柔軟性が必要だ。さらに、総理大臣の了承の下に行われる、領海等での海上警備行動についても、主眼は当該船舶の「不法行為の阻止」、あるいは「日本の管轄権の及ぶ水域から追い払うこと」であり、拿捕したり、撃沈したりすることではない上、これまでの例では発出までにかなり時間がかかっている。抑止効果は、大きいとは言えない。
だが、日本国内でも、変化の兆しがないわけではない。2007年4月に施行された海洋基本法は、第26条で離島の保全と海上交通の安全の確保を、第27条で国際的な連携の確保及び国際協力の推進を、謳っている。同法の策定に尽力した山本草二東北大学名誉教授が指摘する通り、領海に入る前に不法行為を阻止するような海上執行法制を整備することが、急務であろう。その上で、自衛隊と海上保安庁、またそれらと海外の関係機関との連携の強化・円滑化のための仕組みをつくることが必要だ。政治家は、政争で国会を空転させるのをやめ、過酷な海の現場で任務に当たる自衛官や海上保安官の安全に配慮し、かつ同盟国・友好国の信頼を得られるような法整備を進めて頂きたい。これは、米国を東アジアの海上安全保障協力に引き込む、良いきっかけにもなる。(おわり)
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