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2008-03-24 00:00
(連載)東アジア海上安全保障協力と日本の貢献(1)
佐藤考一
桜美林大学教授
東アジア協力というと、貿易・投資の伸長に直接つながる経済連携協定(EPA)ばかりが注目されがちだが、経済活動全般を支える海上安全保障協力も極めて重要な案件である。特に、貿易立国でかつ石油供給の80%強を中東に頼っている我が国にとって、シーレーン(海上交通路)の安全は死活的な意味を持っている。実は、この海上安全保障協力の重要性については、日本政府は早くから認識しており、マラッカ海峡等での海賊のハイジャック事件が多発した1998年頃からASEAN地域フォーラム(ARF)や日ASEAN首脳会議、ASEAN+3首脳会議等で東アジア諸国に協力を呼びかけ、2つの大きな成果を上げている。
第1に、海賊対策の諸国際会議がある。具体的には、1999年11月の日ASEAN首脳会議で小渕総理が提案し、海上保安庁がイニシアティブを取り2000年に開催した海賊対策国際会議と2001年以降の海賊対策専門家会合(年次)、そしてこれらを引き継ぐ形で2004年、2006年、2007年と開催されたアジア海上保安機関長官級会合がそれである(次回はフィリピンで開催予定)。ARFの安全保障協力はまだ、信頼醸成と予防外交をオーバーラップさせて進める段階であり、アジア太平洋地域の国防相が一堂に会する公式の国際会議が依然としてないことを考えれば、日本のリーダーシップで地域の海上保安機関が長官級会合の開催に漕ぎ着けた意義は大きい。ARFでも、大いにPRすべきである。
第2に、小泉総理が2001年11月の日ASEAN首脳会議で、「アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)」による海賊情報共有センターの設置を訴え、アジア地域の14ヵ国の署名・批准を得て、2006年11月末にこれがシンガポールに設置された(インドネシアとマレーシアは未署名だが、発足後の会合にオブザーバー参加している)。海賊情報共有センターは、これまでロンドンに本拠を置く、民間の国際商工会議所国際海事局(IMB)に任せ切りだった海賊情報を、IMBの協力も得ながら、フォーカル・ポイントを設置して入手整理し、国家間で情報共有ができるようにすること、そして各国の海上保安機関の協力体制の整備にも貢献すること、を目的としている。
これらは、口で言うほど簡単なことではない。まず、海賊については、自国の海域が危ないと思われるのはどこの国もいやであるから情報の公開を渋るし、海上保安機関は領海や排他的経済水域の警備、不法移民の取り扱い等をめぐって、互いに軋轢があるため、警戒心が働くからである。このため、海賊情報共有センターの開設には小泉総理の提案から5年もかかった。だが、現在は伊藤嘉章事務局長(前国連代表部公使)、松本孝典事務局長補(海上保安庁より出向)の2名の日本人専門家の指導の下、中国、インド、韓国、シンガポール等のスタッフが協力する体制が出来、最初の年次研究報告書も刊行された(http://www.recaap.org/index_home.htmlよりダウンロード可能)。図表を工夫した見やすい内容で、かつ精緻な分析がなされており、成果は着々と上がっている。(つづく)
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