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2008-03-21 00:00
歴史的大転換の兆し
山下英次
大阪市立大学大学院教授
昨年7月、米国サブ・プライム住宅ローン問題が表面化したことをきっかけに、米国経済の先行きに対する不安が広がっている。市場関係者や多くの専門家は、米国経済の景気後退(リセッション)の可能性を云々しているが、今回の出来事は、単に一つの景気サイクルの中での下降局面というような生易しいものでは済まないであろう。そうではなくて、アメリカ経済の非常に長期にわたる趨勢的・本格的な衰退過程の始まりと理解すべきではないかと、私は捉えている。しかも、かなり急速な衰退となるかもしれない。
米国経済は、マクロ的にも、家計部門のミクロ的にも、長年にわたって無理に無理を重ねてきた。すなわち、いま起きつつあることは、住宅バブルの崩壊であるが、米国経済全体が最近10年以上にわたって、バブルを膨らませてきてしまった可能性があるのである。すなわち、米国経済は、10年を遙かに超える期間にわたって、いわばほとんど爪先立ちの状態のような思い切り背伸びをしたままで来てしまったのである。アラン・グリーンスパンがFRB議長の時代に、超金融緩和政策を長らく続け、高成長路線を邁進してきてしまったことにも大いなる責任がある。これまでは、米国では、グリーンスパンは、あたかも神様のように高い評価を受けてきたが、米国経済全体のバブルが弾ければ、彼に対する評価は一変することになるであろう。
私は、数年前から、アメリカの政策は、経済政策、安全保障政策ともにいずれ破綻すると言ってきたが、そうしたことが現実になりつつある。かくして、世界は多極化しつつある。アジア地域統合も、そうした世界的な潮流変化に沿った動きととらえるべきである。政府やメディアに「重用」されている日本の安全保障の専門家の多くは、失礼ながら先見性に乏しく、米国の一極支配が今後もまだかなり長く続くとみているようであるが、そのようなことには決してならないであろう。わが国は、このように多極化する世界にあってどのように生きるべきかが問われている。これまでのように、米国一辺倒の単純な政策では到底立ち行かない。
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