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2008-03-14 00:00
東アジア共同体と欧州連合の異同
石垣泰司
東海大学法科大学院非常勤教授
近頃、東アジア共同体と欧州連合(EU)を対比させて地域統合を論ずる研究会やシンポジウムが開かれることが一段と多くなってきた。 いずれの場合にも、東アジア地域は、欧州とは状況が非常に異なるので、東アジアにEUと類似の地域共同体を構築することは無理かつ非現実的であるとの認識は共有されているが、地域統合共同体としては今日最も高度の形態を持ち、発展を続けているEUは、東アジア地域でも1つの理想型ないしモデルとして参考にしない訳にはいかないということであろう。
EUは、1957年にその最初の基本条約であるローマ条約が署名されて、昨年が丁度50周年に当たり、EU各加盟国で祝賀行事が行われたが、その原署名国はフランス、西ドイツ、イタリア、ベルギー、オランダおよびルクセンブルグの6カ国であった。これら6カ国が推進役となって強力に統合を進めた結果、まず関税同盟として域内関税の全廃、対外共通通商政策の構築に成功し、単一経済市場の完成、人、物、サービスの自由移動、対外共通外交安全保障政策の策定等、次々に経済・政治統合を進展させ、国際通貨として最も強いユーロをもつ、今日の27カ国からなるEUに発展を遂げた。
東アジア共同体とEUは、それぞれ取り巻く状況や条件は非常に相違するとしても、東アジア共同体の場合も域内の主要国が強力な推進役とならなければ前には進まないのは自明であり、EU発展の原動力となった上記6カ国に相当するコアとなるべき諸国は、東アジアの場合いずれの国となるのであろうか。それは、ASEAN10カ国でも、北東アジア3カ国でもなく、やはりASEAN+3全体であり、ASEANは、勿論のこと、日中韓の北東アジア3カ国も、1国でも欠けてはならないであろう。しかるに、東アジア地域がEUの場合と大きく異なる最大の事情は、EUの構成国の人口は、最大のドイツが8.3千万人、他の主要国のフランス、英国、スペイン、イタリア、ポーランドも6千万人以下で相接近しているのに対し、東アジア地域の場合10億を超える中国と他の主要国の日本、韓国、インドネシア等の人口規模が余りにも違いすぎることであり、EUとは地域統合の基盤が全く異なることである。
従って、東アジア共同体とEUをあえて対比して考えれば、東アジア地域の現状況は、EUがスタートしたローマ条約署名の50年前以前の段階にあり、関税同盟や単一経済市場の構築もまだ具体的アジェンダには上ってきておらず、現在はいわば共同体建設の序論をいろいろと論議している状況にある。しかし、悲観してはならないのは、東アジア地域においても、ASEAN+3をとりまく政治状況は、近時、以前よりは明らかに好転してきており、とくに今後の日中韓3国の協力関係には期待を抱かせるものがあることである。また、51年前に上記ローマ条約に署名した6カ国のうち、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグの3国は当時すでにベネルックス関税統合を完成させていたが、ASEAN諸国も目下2015年を目途に経済共同体完成に向け邁進しつつある。要するに、東アジア共同体は、依然としてかなりの長期目標であることを銘記すべきであるということであろう。
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