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2008-03-06 00:00
4月総選挙に命運をかける李明博新政権
大江志伸
読売新聞論説委員
内外の期待を担って2月25日に発足した李明博韓国新政権の閣僚内定者の中に、懐かしい名前があった。文化体育観光相に就任予定の柳仁村(ユ・インチョン)さん(56歳、2月29日に正式任命)。極貧から身を起こし、学生運動家から韓国を代表する建設会社トップとなった李大統領をモデルにしたテレビドラマ「野望の歳月」の主人公を演じたタレントという異色の人材である。ドラマ放映は1990年から1991年、筆者のソウル駐在と重なる。柳氏の端正なマスクと息をつかせない展開で高視聴率を誇ったが、失礼ながら、「演技が硬いかな」というのが、当時の柳氏の印象だった。余談になるが、当時の韓国人男性に絶大な人気があった知性派美人女優、銭忍和さんが妻役を演じていた。けなげに夫を支える銭さんの控えめな演技、それも高視聴率を支える一因だった、と記憶している。
ところが、柳氏は「野望の歳月」の成功を足がかりに、実力派のマルチタレントへと変身していく。演劇、放送、ミュージカルと多彩な分野で活躍し、最近はハムレット公演に情熱を注いでいる。李大統領がソウル市長時に創設したソウル文化財団の初代代表を務め、文化行政の経験も積んだ。李大統領と柳氏との親密な関係は、無論、「野望の歳月」放映がきっかけだった。柳氏の文化体育観光相への抜擢は、話題性を狙ったという側面も確かにあるかもしれない。だが、柳氏の役者人生の足跡を仔細にたどると、演劇界の重鎮、理論派文化人というもうひとつの顔が見えてくる。柳氏の起用は、李大統領の掲げる「実用主義」が根っこにある、と見てよさそうだ。
その「実用主義」内閣がスタートからつまずいている。閣僚内定者の不法な資産形成といった疑惑が野党に次々と追求され、統一相など3人が「入閣辞退」に追い込まれた。首相内定者の韓昇洙氏に対する国会の任命同意も、未申告の不動産売買があったとして野党が難色を示し、政権発足5日目にやっと承認される有様だった。高額所得者がずらりと並ぶ顔ぶれから、「金持ち特権内閣」との批判も浴びた。柳氏もその一角を占めるとして、矢面に立たされた。野党とりわけ最大野党で盧武鉉政権与党の流れをくむ統合民主党の攻勢は、4月9日の総選挙をにらんだものだ。その思惑通り、閣僚人事をめぐる混乱で、昨年末の大統領選挙で圧勝した李明博人気にかげりが見え始めてきた。
民間世論調査によれば、李大統領の支持率は昨年末の84.7%から75.1%(2月28日時点)と10ポイント近く下がった。別の調査(朝鮮日報・韓国ギャラップ社、3月5日発表)の政党支持率を見ると、与党・ハンナラ党52.9%、最大野党・統合民主党15.0%、野党最左派の民主労働党4.7%と、与党大勝を予告している。だが、昨年末と比べ、統合民主党の支持率は野党統合もあってじわじわと回復している。今の韓国国会(299議席)は、新政権を支えるハンナラ党は130議席に過ぎず、野党勢力が過半数を占める。仮に選挙で過半数獲得に失敗するようなことがあれば、「実用主義」の実践はおろか、決断、実行もままならないハムレット型政権となりかねない。今後5年間、強力な政権運営をめざす李大統領にとって、4月の総選挙は、最初で最大の正念場となる。(この原稿は、2008年2月29日付「読売新聞」夕刊「とれんど」欄掲載拙稿に加筆、修正したものです)
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