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2008-02-15 00:00
見えてきた北東アジアの新しい戦略構造
武貞秀士
防衛省防衛研究所統括研究官
韓国で2月25日に、李明博政権が誕生する。大統領府では新しい秘書官たちの顔ぶれが決まった。米韓同盟を強化しながら、日韓の信頼関係を強化する。韓国大統領選挙史上、最大の票差で勝利した李明博大統領である。強いイニシアチブを発揮するだろう。南北関係では、核放棄の約束履行を厳しく求めるが、南北経済交流は予算が確保されているうえ、「同族に支援の手を差し伸べるのは当然」という韓国民の声が定着している。昨年10月4日の南北宣言で、北朝鮮の地下資源開発に関して韓国に特別の恩恵を与えると約束をしている。韓国が北朝鮮支援の手を緩めることはないだろう。
南北関係の今後を占ううえで、興味深い記事を読んだ。「中国の巨大投資、白紙化。北東アジア最大の埋蔵量。北朝鮮の『茂山鉄鉱山』」という記事である。東京新聞が1月23日付け朝刊で報道した。北東アジア最大の鉄鉱石埋蔵量を誇る北朝鮮の「茂山鉱山」(推定埋蔵量30億トン、採掘可能な埋蔵量は13億トン)の五十年間にわたる開発権を中国企業が取得合意していたにもかかわらず、北朝鮮は計画を白紙化し、限定的な対中輸出にとどまっているという。中国と北朝鮮は合弁出資の割合と投資資金の回収方法をめぐる意見対立で最終的に決裂したという。北朝鮮は中国に開発権を渡せば、国内の製鉄業が衰退すると懸念して、資源流出量を制限しているという。この記事と10月4日の南北宣言をあわせて読むと、北東アジアの新しい戦略構図が見えてくる。
北朝鮮における資源開発をめぐり、中国が先行したあと、韓国が巻き返しているという展開があり、最近全体として中韓間に微妙なムードが流れ始めているのである。韓国の李明博政権が、中国にどのような政策をとるか、中国は関心を持っている。ロシアのエネルギー資源に関心のある李明博政権の誕生で、韓国は中国よりもロシアを向くかもしれない。中国はそれに気づいている。また、朝鮮半島の平和体制構築論議に関して、南北が米国との間で、中国抜きの3者会談を始めるのではないかと、中国は心配している。
いま、北東アジアで最も重要なのは、韓国、北朝鮮、中国の3者の関係である。北朝鮮の資源をめぐる開発競争、南北経済協力、歴史認識をめぐる中韓の微妙な関係、中国の影響力に対する北朝鮮の懸念といった問題が絡み合っている。北東アジアでは90年代の日米韓と中ロ朝のグループ化の時期から、イシューごとに、各国の協調、対立関係が変わるという、複雑な時代に入った。
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