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2008-02-08 00:00
(連載)東アジア共同体と岡倉天心(2)
進藤榮一
筑波大学大学院名誉教授、国際アジア共同体学会代表
アジアには、アジア共通の利益と文化があって、それらはヨーロッパ(西欧)の利益や文化とは違う。しかし近代以降アジアは欧米に踏み敷かれ、分断のくびきにつながれてきた。それゆえ、アジアがアジアを取り戻すためには、従属のくびきを断って、欧米のつくる「近代」を乗り越えなくてはならない。「アジアは一つである」という共通概念。「欧米から自立すべきだ」という対抗概念。そして「ともに実現すべき共通のプロジェクトがある」という運動概念としてのアジアだ。
そのようなアジアを、21世紀情報革命下のグローバル化が創り始めている。実際、通貨危機や鳥インフルエンザ、海賊の頻発に象徴される共通のリスクと、ヒトとモノとカネの流れがつくる共通の利益と文化。それらが今「一つのアジア」を生み出している。かつての第一や第二の波と違って、単に理念ではなく現実として、政治に先行しながら経済や文化のレベルで進行している。それが、第二次大戦後の欧州と同じように、東アジアにも地域統合の動きを加速させている。まず経済的相互依存が深化し、域内生産ネットワークが構築され、さらなる発展と安全保障にとって域内の国境が障害と化している。次いでグローバル化の進展が、ドルと核とアグリ(農)のグローバリズムを肥大化させ、アジア諸国に共通の脅威をつくり出している。さらに情報革命下で、都市中間層文化が生まれ、古層としての儒教・仏教コンプレックスを浮上させながら、開発や食料、環境保護に向け共通のプロジェクトを要請しつづけている。かつて天心が希求しながら手にできなかった東アジア共同体への胎動である。その胎動が、私たちの「第三の開国」を促しつづけている。
グローバル化の進展下で、東アジアの経済統合と共同体形成への動きが加速される中、アジアとは何であるかが問い直され、日本とアジアの生きる道が求められている。この度、国際アジア共同体学会は、国際交流基金の助成を受け、東アジア共同体評議会との共催の下に、かつて「アジアはひとつ」を謳った岡倉天心の茨城五浦・日本美術院移住101年目を記念し、グローバル化に開かれた21世紀アジアを展望し、日本とアジアの地域統合の未来を切り拓くために、来たる2月23日(土)午後2時から6時半まで、有楽町朝日ホールで、「東アジア共同体と岡倉天心:21世紀アジアを展望する」を開催する。
第1部は、「アジア主義の光と影」と題し、評論家の松本健一氏による基調講演および中国社会科学院の孫歌氏による問題提起のあと、山室信一・京都大学教授、崔相龍・元駐日韓国大使、ザイフェルト・ハイデルベルグ大学教授、中島岳志・北海道大学准教授、岡倉登志・大東文化大学教授が、パネルディスカッションをおこなう。第2部は、「いま、つくられつつある東アジア経済共同体」と題し、金泳ホ・韓国通商資源省元長官による基調講演および谷口誠・元国連大使による問題提起のあと、タノン・ビダヤ・タイ前財務大臣、柳沢享・豊田通商元副社長、劉江永・清華大学教授、服部民夫・東京大学教授、大西広・京都大学教授が、パネルディスカッションをおこなう。
入場料は、第1部、第2部の通しで2,000円。事前購入の申込みが必要につき、参加希望者は、学会事務局宛に、メール ahayashi@soka.ac.jp またはFAX0426-91-9383で申し込んだのち、りそな銀行土浦支店口座(口座名:国際アジア共同体学会、普通口座:1722641)に入場料を振り込むこと。振込用紙をもって入場券に換える。また、チケットぴあ、ファミリーマート、サンクスでも購入可能。座席数に限りがあるので、希望者は至急お申込みありたい。(おわり)
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